横浜DeNAベイスターズは、5年間最下位争いでも、なぜ連日満員なのか。5年間で売上を倍増させ、赤字球団を黒字化させた球団社長によるマーケティング論。
■最下位なのに満員の横浜ベイスターズ
横浜DeNAベイスターズの観客動員数は、2011年110万人から2015年には約180万人にまで増えた。年間稼働率は約90%。ベイスターズのハマスタでのゲームは「プレミアムチケット化」した。この間、ベイスターズは勝つことで来場者数の増加を実現した訳ではない。2011年から2015年までのベイスターズの順位は、6位、6位、5位、5位、6位。5年間低空飛行を続けている。
プロ野球の興行においては、経営側の努力ではコントロール不能な領域が存在する。ゲームの勝敗、または天気や気温などの気象条件も経営者にはコントロールできない。その中でも、一番大きな変数要素となりうるのが「勝敗」である。勝敗は来場したファンの満足度を大きく左右する。プロ野球というスポーツは、過去の歴史上、どんなに強いチームでも、2、3回に1回はシーズンを通すと負けている。つまり、1/2ないし1/3の確率でお客様を失いかねない。であるならば、コントロール可能な領域に徹底的に力を注ぐべきである。例えばベイスターズが試合に負けたとしても、球場を訪れたこと自体で満足できるような「ボールパーク」にするのが集客の王道である。
■最下位でもお客様が来てくれる理由
ベイスターズがなかなか勝てない中、多くのお客様がハマスタに来てくれるきっかけには、次の3つの理由がある。
①コミュニケーション
地元ないし、身近なチームとしての興味関心が潜在的に存在する横浜市、神奈川県に住む多くの方々に、あらゆる情報を届け、コミュニケーションを重層的に積み重ねてきた。それによって、チームが成長しようともがいている姿を我が事のように感じてもらうための努力を続けてきた。
②経営の革新性・透明性
横浜スタジアムのTOBを含め、新しいことに挑戦してきた。さらに経営の経過を透明にし、地元に皆さんに伝え続けてきた。
③ブランディング
「日本一の街・横浜」という街のブランドにシンクロさせるために、広告を含むすべてのデザインにこだわり、おしゃれでかっこいいと感じてもらえるよう、横浜に密着したブランディングを進めてきた。
会社としての球団とプロ野球としてのチームとは表裏一体。経営努力を重ね、それらをいいことも悪いことも伝え続けてきた。それによって、経営への信頼感、チームの成長への期待感がファンと地域の間で醸成された。つまり、地元の球団というチームという「空気」を作れたことが大きい。
著者 池田 純
1976年生まれ。横浜DeNAベイスターズ 代表取締役社長 大学卒業後、住友商事、博報堂等を経て2007年にDeNA入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長から、NTTドコモとDeNAとの合弁会社の社長を務めた。 企業再建の経験が豊富だったことから、2011年より横浜DeNAベイスターズ初代社長に就任。多彩なマーケティングを実施し、イベント、グッズなどで次々とユニークな企画を創出。5年間で売り上げを倍増させ、約30億円あった赤字を解消。現在、12球団最年少の球団社長である。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
帯 元サッカー選手 中田 英寿 |
帯3 ライブドア 元代表取締役 堀江 貴文 |
日経ビジネスアソシエ2016年11月号 |
帯2 幻冬舎 代表取締役 見城 徹 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 2分 | |
第一章 最下位なのに満員なのはなぜ? | p.13 | 18分 | |
第二章 顧客の空気を知る | p.51 | 13分 | |
第三章 世の中の空気を知る | p.79 | 18分 | |
第四章 組織の中に戦う空気をつくる | p.117 | 25分 | |
第五章 コミュニケーションのつくり方 | p.169 | 37分 | |
第六章 センスの磨き方 | p.247 | 17分 | |
おわりに | p.282 | 2分 |
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