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2016/09/29更新

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

275分

4P

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未来は資本と人の闘争になる

人工知能の研究は二正面作戦で進んでいる。第1種の新型人工知能システムは、経験から学習する能力を備えている。凄まじい速度で山のような実例を精査して、そこから教訓を引き出すことができる。データが蓄積されていくにつれ、人工知能システムはそこにパターンを見出し、人間には理解しようもない洞察に至る。第2種の新型システムは、視覚と聴覚と触覚を備え、周囲の環境に働きかけることができるシステムだ。1つにまとまっていれば「ロボット」と認識されるものになるが、全てが単一の物理的形状にまとまっている必要はない。

この2種類のシステム「合成頭脳」と「労働機械」を組み合わせれば、高度な知識や技能の必要な仕事を物理的に実行できる。自動車を修理したり、外科手術をしたり、豪華な料理を作ったりできる。このような進歩発展によって、原理的には人はきつい仕事から解放されることになる。

今日存在する職業のかなりの部分が、ブルーカラーは労働機械によって、ホワイトカラーは合成頭脳によって、まもなく消滅の危機に瀕することになるだろう。驚くほど多種多様な生産活動が、肉体的と頭脳的とを問わず、新しいデバイスやプログラムによって代行される日がやってくる。産業の自動化が進むと、資本さえあれば人の労働力は不要になる。

未来に起こるのは資産と人との闘争だ。人の創造物によって蓄積された資源は、建設的な目的には使われず、生産的な用途にも当てられないからだ。いわゆる1%の富裕層は、現在のこの趨勢から恩恵を受けているかもしれない。しかし、誰が資産を所有するかについて慎重な予防措置を取らなかったら、1%が0%に縮小する危険が間違いなく存在する。

人工知能に経済を乗っ取られる

AI技術をたった1つ応用するだけで、何もかもが変わる。自動運転車だけで、交通事故が減り、駐車場の土地転用が可能になる上、環境汚染は大幅に軽減される。世界は今よりはるかに豊かで安全で健康的な場所になる。これ以外にも、これから登場する技術は数え切れないほどあって、その1つ1つがこれと同じぐらいの影響を与える可能性がある。人類の未来はバラ色だが、但しそれは、その富を公平に分配する方法を確立できればの話である。

今後、十分に能力のある合成頭脳が、様々な実際的・経済的な理由で方の前に「人工人格」と認められるというのは大いにありうる。しかし、この道を進むのは危険だ。長期的には、それによって人間社会に破滅的な影響が及ぶ恐れがある。特に危険なのが、契約を結ぶ権利と資産を所有する権利だ。

ロボットによるハルマゲドンは実際には軍事衝突問いう形で起こることはないだろう。機械は反乱を起こしたり、人類の支配に武器をとって立ち向かったりはしない。こっそりじわじわと経済が乗っ取られていくのだ。