人工知能技術の進歩によって、大失業時代がやってくる。人工知能が人間の仕事を全て代替するようになる社会では、どのような問題が生じるのか。我々はどのように対応していくべきなのか。スタンフォードのAI研究の第一人者による人工知能社会の未来図。
■人工知能社会は失業と所得格差問題を拡大する
50年の歳月と何十億もの資金を費やして研究してきた結果、人工知能の「暗号」は解明されつつある。加速するコンピュータ技術の進歩に背中を押されて、ロボット工学、認知科学、機械学習の分野も近年大きく前進している。そのおかげで、人間の能力に勝るとも劣らない新世代のシステムが誕生しつつある。これがこのまま進めば、やがて未曾有の繁栄と余暇の新時代が開けるだろうが、その移行には長い年月と多大な辛苦を伴う恐れがある。経済システムや法制を適切に修正していかないと、長期にわたる社会的混乱が起こりかねないからだ。
その予兆はいたるところにある。現代先進諸国の二大害悪、失業問題と所得格差の問題は、経済成長が続いている時ですら社会を苦しめている。放っておけば、やがてあっと驚く光景が現出することになるだろう。貧困が世界を覆い尽くす一方で、その背景幕をなす社会はあくまでも豊かに快適になっていく。
情報工学の進歩はすでに、凄まじい勢いで産業と職業を内側から破壊しつつある。その進行の速さに労働市場は対応しきれず、これから状況はさらに悪化していくだろう。さらにまた、かつてない新たな形で資本による労働代替が進み、生み出される富の配分はそのため甚だしく偏って、富める者だけがますます富むということになる。
失業問題は今後深刻な問題になるだろう。それは職がなくなるからではない。職はあるのだが、それに必要な技能がどんどん進歩していくせいで、労働者がそれに適応できないのだ。
著者 ジェリー・カプラン
1952年生まれ。スタンフォード大学フェロー ペンシルヴェニア大学でコンピュータ科学の博士号を得たのち、スタンフォードAI研究所に入所。 その後いくつもIT部門の新興企業を興して成功、いまは古巣のスタンフォード大学に戻り、法情報科学センターのコンピュータ学部で人工知能の及ぼす影響と倫理について教えている。 起業家、発明家として知られるだけでなく、著述家としても高い評価を受けている。
WEDGE |
日本経済新聞 |
帯 東京大学大学院 准教授 松尾 豊 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.7 | 3分 | |
導入(イントロダクション)――これがあなたの未来です | p.11 | 15分 | |
第1章 コンピュータに釣りを教える | p.29 | 13分 | |
第2章 ロボットに治りかたを教える | p.45 | 15分 | |
第3章 こそ泥ロボット | p.63 | 10分 | |
第4章 神々は怒っている | p.75 | 15分 | |
第5章 おまわりさん、あのロボットが犯人です | p.93 | 13分 | |
第6章 送料無料(フリー・シッピング)の国、アメリカ | p.109 | 13分 | |
第7章 大胆なファラオたちの国、アメリカ | p.125 | 19分 | |
第8章 どんな仕事も自動化できる | p.149 | 28分 | |
第9章 ぴったりの方法がある | p.183 | 26分 | |
導出(アウトロダクション)――これがあなたの子供たちの未来です | p.215 | 18分 |
人工知能(artificial intelligence、AI)とは、人工的にコンピュータ上などで人…