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2016/09/27更新

ワタミの失敗 「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造

  • 新田 龍
  • 発刊:2016年9月
  • 総ページ数:240P

150分

3P

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ワタミの失敗

制度面や待遇面においてワタミは特段悪質とは言い切れない。労基法に違反した企業、裁判になった企業、過労自殺者が出た企業は数多く存在するにもかかわらず、ワタミだけが突出して、叩かれ続けたのはなぜか。そこには次の3つの背景がある。

①全国的に認知度が高く、幅広い世代、地域で話題を共有できる
②経営者がよく知られている
③かつてのポジティブなイメージと実態のミスマッチがある

批判されやすい背景に加えて、批判対応においてやるべきことをやらず、「やってはいけないことをやってしまった」ことが、ワタミの失敗であった。その要因は10つ。

①ネガティブ報道のきっかけが「従業員の過労自殺事件」であったこと
ワタミが何と説明・弁解しようと「人が1人亡くなっているのに」という反論の前に全く無力となった。

②最初に詳細に報道したのが「週刊文春」であったこと
緻密に物証や証言を取材する週刊文春によって報道され、インパクトが大きかった。

③渡邉とワタミが「危機管理広報」に失敗したこと
従業員の過労自殺に対して、会社やトップが当初何ら公式なコメントを発さずに、事件に向き合っていない印象を与えてしまった。

④情報が「ネット経由」で拡散する時代であったこと

⑤渡邉の選挙出馬によって政治批判の材料に利用されたこと

⑥「ブラック企業」の定義に関して、社内外で温度差があったこと
世間で言うブラック企業と、自分達が考えるブラック企業の認識に齟齬があり、「ワタミがブラックとは全然思っていない」というコメントで、ネガティブな印象を与えてしまった。

⑦従業員の権利意識が高まったこと

⑧自社労働組合の不在により社員自治機能が喪失していたこと

⑨渡邉が、自身の考えを率直に語る人物であること
渡邉は自分の行動に絶対的な確信を抱いてる。批判にさらされた企業トップとしては配慮不足、説明不足があった。

⑩渡邉に悪意がなかったこと
渡邉自身が、佐川急便時代に1日20時間近く働き、お金を貯めて起業して夢をつかんだという成功体験を持っていた。そのために「ブラック」に対する一般的な認識と、彼の信念に齟齬があった。

ブラック企業になりやすい会社の共通点

善意を持って従業員を扱っている場合でも、価値観が合わない一部の人にとってそれが迷惑な「押しつけ」に感じられ、結果として「ブラック」と認識されてしまうことがある。次の4つの条件の内、複数が揃った場合、意図しない内に「従業員に対する善意の押しつけ」が発生する可能性がある。

①抽象度が高い崇高な理念を掲げている
②創業経営者に強いコンプレックスや挫折経験がある
③経営者が社員の成長を心から望んでいる
④家族主義的な雰囲気を重視している