高齢化や人口減少によって悲観的に見られる日本の未来において、どのようにすれば経済成長を実現できるかを論じた一冊。
人口が減った場合に応じた産業構造のデザインこそが大切であると、将来の産業のあり方を説いています。
■高齢化や人口減少になっても経済成長できる
2060年の日本の人口は約8700万人。現在のドイツぐらいの規模になる。65歳以上の人口の比率は40%を超える。しかし、高齢化や人口減少によって成長が否定されるわけではない。
2060年に求められるのは、人口8700万人で成り立つ社会システムのデザインだ。その社会システムの中核にあるのが「産業構造」である。日本企業・経済が成長するためには、国内外の成長フロンティアに打って出ることが経営戦略上欠かせない。その鍵は、少子高齢化・人口減少など国内に山積みする課題だ。これらは重荷である一方で、成長のヒントでもある。
2060年について、少し見方を変えると、全く違う世界に見えてくる。人口減少といっても、2060年時点の日本は現在のドイツ並みの人口規模を有する。10人に4人が65歳以上と言っても、今でも高齢者は若者以上にアクティブである。
2060年の日本の姿は、現在から一変している。今ある建物の多くは建て替え時期を迎えており、将来、全く別の街並みになっているだろう。技術進歩も目覚ましく、現在、研究開発中の技術の多くが実際に使われており、新たな可能性を切り拓いている。
高齢化や人口減少によって成長が否定されるわけではない。なぜなら、それらの変化に応じた「新たな産業構造」に進化することで、成長できる可能性があるからだ。
成長のためのヒントは、日本企業・経済が直面する課題にある。遅かれ早かれ、世界の中にも日本と同じような課題に取り組まなければならない国がある。日本企業が見出した解決策は、これらの国でも十分に通用する。言い換えれば、国内の成長フロンティアにいち早くうって出た経験やノウハウが、海外のフロンティアで先行者利益をもたらす。このような取り組みが、日本企業が成長し、日本経済が「拡大均衡」に達する鍵を握る。
著者 鈴木 将之
EY総合研究所 未来社会・産業研究部 エコノミスト シンクタンクを経て、2014年EY総合研究所入社。専門分野はマクロ経済・金融・産業構造の分析。定期的な市場等の分析に加え、民間企業・経営者へのマクロ経済・市場環境に関する助言なども実施。
エコノミスト 2016年 8/23 号 [雑誌] |
日経ビジネスアソシエ2016年9月号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 拡大均衡の2060年 | p.17 | 20分 | |
第2章 歴史から学ぶ成長のヒント | p.51 | 15分 | |
第3章 2060年の「拡大均衡」社会 | p.77 | 29分 | |
第4章 安心・安全・健康をお手頃価格で提供―食生活サービス | p.127 | 13分 | |
第5章 住環境・コミュニティの提案―住環境・社会インフラサービス | p.149 | 10分 | |
第6章 移動需要を中核に「サービスからエネルギー供給・管理へ」まで拡大―モビリティ | p.167 | 12分 | |
第7章 アクティブ高齢者市場の拡大へ―ヘルスケア | p.187 | 12分 | |
第8章 新しい成長基盤―レジャー・観光 | p.207 | 9分 | |
第9章 2060年に向けた企業の取り組み | p.223 | 12分 | |
終 章 2060年に向けて | p.243 | 3分 | |
終わりに | p.248 | 2分 |