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2016/07/13更新

新しい幸福論 (岩波新書)

181分

2P

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日本で貧困の多い理由

①「失われた20年」と言われる日本経済の不振
②年金・医療・介護といった社会保障制度が不十分
③非正規労働者の増加
④生活保護、雇用保険制度による保障が不十分
⑤最低賃金の低さ

これら経済的な理由の他に、日本人の心や精神構造の変化によっても、貧困の増加を背後から促している。

①経済が豊かになり「上を向いて歩こう」という雰囲気が希薄化
②資本主義への疲れ
③単純労働、拝金主義へのむなしさによる勤労意欲の低下
④離婚率の増加
⑤貧困当事者の発言機会の少なさ

機会の不平等が格差を生む

人は勤労によって賃金や所得を得るが、働く場所をどう見つけるか、職場での職業・地位はどうか、といったことが所得の決定に大きな影響を与える。職業や職場上の地位に就く際、すべての人にそれに就く機会が平等に与えられているか、あるいは差別がないかは大切な事柄である。さらに仕事に就く前に受ける教育の効果や教育を受ける機会を考慮することも重要である。

日本における最も深刻な機会の不平等は、親の経済状況に応じて、子供が教育を受ける際に、格差が生じていることにある。親の所得が高ければ子供は高い学歴を得ることができる一方で、親の所得が低ければ子供は低い学歴に甘んじねばならない。

格差問題が幸福度を下げる要因の1つ

「国民が幸福である」と判断している比率が最も高い国はデンマーク。次いで、スイス、アイスランド、ノルウェー、フィンランドと続く。なぜこれらの国の幸福度が高いのか。

①国民の所得分配が非常に平等
②年金・医療・介護・失業などの福祉サービスが手厚い
③人間の生き方として「平等」が重要な価値であると信じる人が多い
④勤労意欲が高く、労働生産性を高くするために教育・訓練に熱心

国連調査によれば、日本の幸福度は157か国中53位と高い位置にいるとは言えない。日本においては、所得格差の拡大が、不幸と感じている人の増加原因の1つである。

格差の拡大は経済成長にもマイナス

アベノミクスをはじめ、経済成長を主たる経済政策の目標にすべし、と主張する成長論者は格差の問題を無視する傾向が強い。彼らは、高い所得を稼いでいる有能な人の報酬を抑制したり、高い税金を徴収したりすると、それらの人の勤労意欲を阻害するので経済運営にマイナスになるとしている。

しかし、格差の拡大は、富裕層と貧困層が増大し、中間層の減少を意味する。中間層が減ると、家計消費の減少量が大きく、経済成長にとってマイナスになる。先進国においては、格差の存在が経済成長率を下げたという事実が実証されたと結論づけられている。

格差問題が大きい日本では、税による再分配政策は、現在のところ弱く、これを見直すことも重要である。