アインシュタインが100年前に、一般相対性理論で予言した重力波の存在。
ブラックホールの存在を証明する重力波を、観測するために、これまで様々な学者が奮闘してきた歴史を紹介する一冊。
■ブラックホールの衝突で時空に波が生じる
宇宙のどこかで、2つのブラックホールが衝突する。どちらも恒星並みの質量を持ちながら、サイズは1つの都市ほどしかない。重力で互いにつなぎ留められた2つのブラックホールは、最期を迎えるまでの数秒間、両者が接触することになる点の周りを何千回も周回して時空をかき回し、やがて衝突して合体し、1つの大きなブラックホールとなる。宇宙の誕生以降で最大級となる途方もないエネルギーがかかわるこの事象は、太陽10億個分の一兆倍を上回るエネルギーを生み出す。ブラックホールは完全な暗闇の中で衝突し、この衝突で爆発的に放たれるエネルギーは一部たりとも光として現れない。したがって、望遠鏡でこの事象を観測することはできない。
2つのブラックホールの合体により生じる膨大なエネルギーは、純然たる重力現象という形で、時空の形状の波動、すなわち重力波として発散される。重力波とは、物質媒体なしで伝わる音のようなものである。ブラックホール同士の衝突によって音が発生するのである。
数十億年前、2つの大きな恒星が互いの周りを回りながら存在していた。周りに惑星があったかもしれないが、この連星系は惑星を宿すには不安定すぎていたかもしれないし、組成が単純すぎていたかもしれない。やがて片方が死に、次いでもう片方が死んで、ブラックホールが2つできた。そして、漆黒の中、おそらく10億年単位の時間、互いの周りを回っている内、最後の200ミリ秒で衝突・合体し、その2つに出せる最大の重力波を宇宙空間に放った。その音は14億光年の彼方からこちらへやってきた。
著者 ジャンナ ・レヴィン
コロンビア大学バーナード・カレッジ物理学・天文学教授 作家としてHow the Universe Got Its Spots, A Madman Dreams of Turing Machinesといった著書をもつ一方で、宇宙物理学者としてブラックホールや時空の余剰次元、重力波に関する業績がある。2012年にはグッケンハイム・フェローシップを受賞。
帯 カリフォルニア工科大学教授 大栗 博司 |
帯2 作家 佐々 涼子 |
週刊東洋経済 2016年7/16号 [雑誌] |
日本経済新聞 名古屋大学名誉教授 池内 了 |
日経ビジネス |
週刊東洋経済 2017年12月30日・2018年1月6日合併号 [雑誌](2018大予測 波乱の年を140テーマで見える化! ) サイエンス作家 竹内 薫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
1章 ブラックホールの衝突 | p.11 | 4分 | |
2章 雑音のない音楽 | p.16 | 18分 | |
3章 天の恵み | p.39 | 16分 | |
4章 カルチャーショック | p.60 | 13分 | |
5章 ジョセフ・ウェーバー | p.77 | 11分 | |
6章 プロトタイプ | p.91 | 9分 | |
7章 トロイカ | p.103 | 12分 | |
8章 山頂へ | p.119 | 9分 | |
9章 ウェーバーとトリンブル | p.131 | 10分 | |
10章 LHO | p.144 | 15分 | |
11章 スカンクワークス | p.164 | 17分 | |
12章 賭け | p.186 | 11分 | |
13章 薮の中 | p.200 | 12分 | |
14章 LLO | p.216 | 15分 | |
15章 フィゲロア通りの小さな洞窟 | p.236 | 8分 | |
16章 どちらが早いか | p.247 | 8分 | |
エピローグ | p.257 | 8分 |
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