消費者が、レビューサイトなど多くの情報にアクセスできる時代、これまでのマーケティングの定説は通用しなくなった。これからのマーケティングにおいて大切なことは何かを、スタンフォード大学のマーケティング教授が紹介している一冊。
■相対価値から絶対価値へ
かつての消費者は、他の何かと比べて相対的に意思決定を行っていた。例えば、ブランド名、その企業の過去の利用体験、高めに設定された定価、競合ブランドの広告メッセージなど。人間の選択が製品やサービスをオファーする文脈やフレーミングによって大きく左右されることがあるという常識は、今でも成り立つ。
しかし、超情報化時代に突入するにつれて、この状況は変化を遂げようとしている。レビュー・サイト、ショッピング・アプリ、ソーシャルメディア上の幅広い人脈、専門家などの情報源へのかつてないアクセス。消費者が数々の情報にアクセスできる世界では、製品やサービスのおおよその利用体験を予測するのはずっと楽になる。つまり、製品やサービスの「絶対価値」が丸わかりなのだ。絶対価値に頼ることで、消費者は平均的により的確な判断を下せるようになる。そして、かつて多くの製品やサービスの体験の質を予測する手がかりとなっていた「相対的要因」(ブランディング、ロイヤルティ、ポジショニングなど)の影響力は急激に落ちることになる。
かつての消費者は、ブランド名、定価、その企業の過去の利用体験といった別のものと照らし合わせ、相対的に判断を下していた。しかし現在では、ますます製品やサービスの「絶対価値」に基づいて判断することが増えている。
昔と今の大きな違いは、質の評価である。昔は、購入前に製品やサービスの質を評価するのが難しかった。そこからマーケティングの大部分が生まれた。つまり、ブランド、価格、製造国、広告などといった、質を知る手がかりだ。しかし、その状況は変わりつつある。
著者 エマニュエル・ローゼン
ナイルズ・ソフトウェア社 マーケティング担当 元副社長 ベストセラーとなった『クチコミはこうしてつくられる』の著者。同書で「口コミ・マーケティング」の時代の到来を予見し、後に実現したことで注目を集めた。 かつてナイルズ・ソフトウェア社のマーケティング担当副社長として、同社の主力商品「EndNote」をリリース。精力的に講演もこなし、グーグル、インテル、ナイキ等の企業をはじめ、世界じゅうのフォーラムで観衆を惹きつけてきた。コピーライターとしての顔も持ち、「カンヌ国際広告祭(現カンヌライオンズ)」で2度の受賞歴を持つ。
著者 イタマール・サイモンソンスタンフォード大学ビジネススクール セバスチャン・S・クレスゲ・マーケティング教授 消費者の意思決定に関する世界的な権威と評されていて、これまでに、消費者の選択、買い手の意思決定を動かす要因、マスカスタマイゼーションの限界など、マーケティングの中心的な概念について、新たな知見をもたらしてきた。その研究は数々の賞を受賞しているだけでなく、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど、世界じゅうのメディアで取り上げられている。 スタンフォード大学では、マーケティング・マネジメント、批評的・分析的思考、企業向けマーケティング、テクノロジー・マーケティング分野のMBA課程や、消費者行動、消費者調査手法、意思決定分野の博士課程で教鞭をとってきた。また、マーケティングや意思決定分野の有名学術誌の9つの編集委員会にも名を連ねている。
帯3 元アップル エバンジェリスト ガイ・カワサキ |
TOPPOINT |
日本経済新聞 第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野 英生 |
帯 IDEO CEO ティム・ブラウン |
帯2 スタンフォード大学ビジネススクール教授 チップ・ハース |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 なぜソーシャル・メディアではマーケティングが効かないのか | p.3 | 17分 | |
第2章 消費者は本当に〝不合理〟なのか? | p.27 | 17分 | |
第3章 ソーシャル・メディアが生んだ新しい「意思決定パターン」 | p.51 | 11分 | |
第4章 「カスタマー・レビュー」がマーケターを凌駕する | p.67 | 16分 | |
第5章 失われゆく「ブランド」の価値 | p.91 | 20分 | |
第6章 ロイヤリティと顧客満足度も「過去」のもの | p.119 | 13分 | |
第7章 製品の普及パターンもキャズムも消えつつある | p.137 | 14分 | |
第8章 ポジショニングや説得はムダ? | p.157 | 13分 | |
第9章 「影響力ミックス」で考える顧客の意思決定パターン | p.177 | 20分 | |
第10章 顧客とのコミュニケーションは適切か?〈応用編1〉 | p.205 | 17分 | |
第11章 市場調査の方法を180度転換しよう〈応用編2〉 | p.229 | 17分 | |
第12章 顧客セグメンテーションを見直そう〈応用編3〉 | p.253 | 11分 | |
第13章 「絶対価値」はこれからどこへ向かうのか | p.269 | 13分 | |
第14章 「絶対価値」の世界で勝ち残るマーケターの新しい常識 | p.287 | 10分 |
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