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2016/06/22更新

左遷論 - 組織の論理、個人の心理 (中公新書)

  • 楠木 新
  • 発刊:2016年2月
  • 総ページ数:229P

176分

4P

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左遷を行うという明確な意図を持った人事異動は少ない

人事異動は単純に空いているポストに社員を配置する事だけではない。そこには諸々の目的が含まれている。そのため社員の受け止め方に幅が生まれ、不本意な人事や左遷だと判断する理由も生じる。企業が転勤を実施する目的について、重要視している点は次の通り。

①業務ニーズに合わせて人材を機動的に配置すること
②能力や適性にあった配置を行うこと
③人材育成を進めること
④組織を活性化させること
⑤昇進とキャリアアップの機会を与えること
⑥育児・介護等の生活上の要望に応えること

人事異動は、会社にとっても社員にとっても活性化の仕掛けになっている。日本の企業では、どんな仕事をするのかという点のみならず、誰と一緒に仕事をするかという点が重要である。そのため人事異動の持つ効果は大きい。会社側から見れば、組織の活性化であるが、個々の社員には働く環境を変えるという機能を担っている。

役員や上司が「左遷を行う」といった明確な意図を持った異動は多くはない。ただ、人事異動がいろいろな目的、機能を持ち合わせている事が、不本意な人事や左遷が行われたと社員が思い込む理由になっている。

なぜ敗者復活はないのか

左遷に遭遇しても、20代や30代であれば、リカバリーできる余地は大きい。しかし、40歳を過ぎた社員が再起する事は実際には難しい。この年齢になれば社内の評価はほぼ固まっているからだ。40代以降に再び評価を得るケースは、3点に限られる。

①過去に一緒に仕事をした先輩や同期からのヒキ
②自分の上司や先輩社員が病気や事故、不祥事等により突然姿を消す場合
③女性登用などのように対外的なアピールのために特定の対象者の評価を上げる場合

3つのケースはいずれも他人頼みで、自分の努力や能力を磨くこと、即ち自分で実現できるものではない。そういう意味で40歳以降になると、自力による敗者復活はないと言っていい。

左遷された場合は、どうすればいいのか

会社員は組織の枠組みの中で過ごす事が日常なので、組織内の年次、役職、経験年数などによって自分自身の位置づけを確認している。そして自分で枠組みがあると思ってしまえば、本当にその中に埋没してしまう。

左遷を会社という組織の枠組みの中だけで考えていれば、挫折や不遇だという受け止め方しかないかもしれない。しかし、枠組みを外して考えると新たな世界が開ける事がある。視点を変えてみれば、余裕のある恵まれた場所という事にもなり得る。開き直ってその余裕を自分のために十分活用する事も考えられる。組織内の立場から離れると、数多くの自己イメージを持っている事がわかる。単一のアイデンティティに限定されずに、もう1人の自分を持つ方が組織で働く苦しさや閉塞感から解放される。