汝自身を最適化せよ
EQを伸ばす目的は、自分自身を最適化して、既にできる以上の水準でも機能するのを助ける事だ。既に自分の仕事を見事にこなしていても、情動面の能力を研ぎ澄まし、深めれば、さらに進歩できる。
EQのトレーニングは、まず注意力を鍛える事から始まる。穏やかさや明瞭さをもたらす強くて安定した鋭敏な注意は、EQを築き上げる土台となる。自己認識は自分を客観的に眺める能力があってこそのもので、客観的に眺めるには、自分の思考と情動を第三者の立場から眺める能力を必要とする。情動に翻弄されるのではなく、ひたすら情動を客観的に眺めるのだ。そのためには、安定していて、明瞭で、評価や判断とは無縁の注意が求められる。
また注意力は自己統制とも結びついている。強い情動的刺激を経験しても、行動を起こす前に一瞬だけ間を置く。そうすると、その情動に満ちた状況でどう反応したいか選ぶ事ができる。
マインドフルネス瞑想の練習方法
注意力を鍛える方法は「マインドフルネス瞑想」と呼ばれる。マインドフルネスとは「意図的に、今の瞬間に、評価や判断とは無縁の形で注意を払うこと」と定義される。マインドフルネスとはただあるがままでいる時の心だ。評価や判断を下す事なく一瞬一瞬に注意を払いさえすればいい。それほど単純である。マインドフルネスで難しいのは、それを深め、強め、持続させる事である。
マインドフルネス瞑想のプロセスは次の通りである。
①意図を生み出す
ストレスを減らすでも、自分の健やかさを増す事でもいい。同じ意図を何度も生み出せば、いずれそれが習慣化し、様々な状況で心の中に湧き起こり、行動を導いてくれるようになる。
②呼吸をたどる
呼吸のプロセスにそっと注意を向けるだけでいい。この時点で注意が増してくる。気が付くと、心が穏やかで集中した状態になっている。練習を積むと、この状態は長く続くが大抵の人は数秒だけだ。
③気が散った状態に陥る
あれこれ思いを巡らせたり、心配したり、空想に耽ったりする。しばらくすると、注意がそれた事に気づく。
④再び注意を集中する
呼吸のプロセスに注意を戻し、単に注意の集中を回復する。さまよう注意を戻すプロセスは、筋力トレーニングで筋肉を収縮させるのに等しい。これが強力な心の「筋肉」を発達させる。そして、自分自身に対する態度を自覚する。自分をどう扱っているか、自分についてどれほど頻繁にひどい陰口をつぶやいているか考えてみる。その態度を、自分に向けた優しさと好奇心に替え、自己嫌悪を克服する。
⑤呼吸をたどるところに戻る
自分の意図を思い起こす。
瞑想は好きな姿勢でして構わない。隙がなく、リラックスした状態を長時間保てる姿勢が最善である。これを最初は2分間、気楽にできそうになったら、時間を延長する。