「現代の魔法使い」と称される研究者が、これからやってくる人工知能が仕事を奪う時代において、生き残るにはいかにあるべきかを語っている一冊。
■「人間がやるべきことは何か」を考える
人工知能が人間を超える瞬間の事を「シンギュラリティ」と名付けられている。シンギュラリティより先は、人工知能が猛烈なスピードでテクノロジーを進化させていくので、人間は世界の将来を予測する事すらできない。
シンギュラリティはまだ訪れていないが、既にコンピュータに取って代わられた人間の仕事はたくさんある。今の社会では、人間がコンピュータを道具として使うのではなく、コンピュータが人間の「上司」のように振る舞っている場面さえある。そういう時代に、人間には一体どんな価値があるのか、人間がコンピュータに対してやるべき事は何か。
「次の世界」に向けて、どんな事を学ぶべきかを考えるのは難しい。ただ基本的には「コンピュータには不得意で人間がやるベき事は何なのか」を模索する事が大事と言える。それは「新奇性」や「オリジナリティ」を持つ仕事であるに違いない。少なくとも、処理能力のスピードや正確さで勝負する分野では、人間はコンピュータに太刀打ちできない。今の世界で「ホワイトカラー」が担っているような仕事は、ほとんどコンピュータに持って行かれる。
■映像的な表現が現実の物理空間で可能になった時代
コンピュータは度重なるブラックボックス化・API化によって中身が見えず、仕組みがわからなくなってしまった。APIとは、簡単に言えば、アプリのプログラムを簡潔に作れるようにするためのインターフェイスの事で、それがある事によって「なぜそのプログラムが動くのか」が見えにくくなっている。
デジタル計算機が生まれて80年、均質化してきた映像的世界は、ブラックボックス化し「魔法の世界」に移行しようとしている。コンピュータを見ても中で何が起こっているかわからないし、インターネットのSNS上では、誰一人として「同じタイムライン」を追っていない時代である。
世界で皆と同じようなものを消費する「映像的価値観」は消失した。これからは一人ひとり違うメディアを使っていいし、コンピュータと人の「N×N」の組み合わせで無限に価値観が広がる「魔法の世紀」なのである。
著者 落合 陽一
1987年生まれ。筑波大学 学長補佐・准教授 デジタルネイチャー推進戦略研究基盤基盤長 大阪芸術大学 客員教授 デジタルハリウッド大学 客員教授 ピクシーダストテクノロジーズ CEO メディアアーティスト 筑波大でメディア芸術を学んだ後、東京大学を短縮修了して博士号を取得。2015年筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰。2017年、筑波大学 図書館情報メディア系 准教授に就任。 経産省よりIPA認定スーパークリエータ、総務省より異能vationに選ばれた。 研究論文はSIGGRAPHなどのCS分野の最難関会議・論文誌に採録された。作品はArs Electronica、SIGGRAPH Art Galleryを始めとして様々な場所で展示され、Leonardo誌の表紙を飾った。 応用物理、計算機科学、アートコンテクストを融合させた作品制作・研究に従事している。BBC、CNN、Discovery、TEDxTokyoなどメディア出演多数。国内外の論文賞やアートコンペ、デザイン賞など受賞歴多数。
帯 SEKAI NO OWARI Nakajin |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ 「魔法をかけられている人」になるか、「魔法をかける人」になるか | p.6 | 19分 | |
第一章 人はやがてロボットとして生きる? | p.45 | 22分 | |
第二章 いまを戦うために知るべき「時代性」 | p.91 | 43分 | |
第三章 「天才」ではない、「変態」だ | p.179 | 15分 | |
エピローグ エジソンはメディアアーティストだと思う | p.210 | 7分 |
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