世界一の乗降客数を持つ新宿駅の構造と歴史を紹介している一冊。
■最も混んでいる駅
新宿駅は「最も混んでいる駅」として、2011年にギネスに登録認定されている。1日の平均乗降客数は364万人。
新宿駅ができた頃、新宿の中心は新宿三丁目にあった。これは現在、新宿三丁目の駅がある場所、すなわち甲州街道と青梅街道の分岐である「追分」にあった。つまり新宿的は当時街外れの、周りに何もないようなところにできた。東京に郊外が広がるにつれ、初めは山手線だけだった路線に、中央線、京王線、小田急線といった郊外を結ぶ路線が加わると、大正の頃から新宿駅は鉄道の集まるターミナル駅としての役割を強めていった。そして1931年には早くも乗降客数で日本一となった。新宿駅は1931年からずっと日本一であった訳ではないが、1966年に日本一を奪還すると、そこから現在にいたるまでの50年間、日本一の座をキープしている。1966年の1日の平均乗降客数は約186万人なので、この50年間でその数は約2倍に増えている。この間、新宿駅はその形を変えながら、増加に対応してきた。
乗降客数がうなぎのぼりに増えた大きな理由は、戦後の混乱を乗り越えて、1960年代からはじまった新宿駅西口一帯の新宿副都心計画にあった。単純に言えば、超高層ビルが1棟建つごとに、利用者が増えた。
新宿駅は日々、364万人の人をさばいている。この人数はドイツの首都ベルリンの人口(約350万人)とほぼ同数で、つまり新宿駅は大きな事故もなく、交通結節点として、ヨーロッパの1つの都市ほどの人間を毎日さばいている事になる。
新宿地域には「新宿」とつく駅が10もある。「新宿駅」「西武新宿駅」「新宿三丁目駅」「東新宿駅」「新宿御苑前駅」「西新宿駅」「西新宿五丁目駅」「新宿西口駅」「新線新宿駅」「南新宿駅」だ。これに加えてJR、東京メトロ、都営地下鉄、小田急線、京王線それぞれに「新宿駅」があり、これで迷わない方がおかしい。
新宿駅は過去から現在に至るまで、絶える事なく増殖を繰り返し、アメーバ状にその規模をじわりじわりと広げている。その増殖の期間は、スペインのサグラダ・ファミリアの建築年数より長くなる。
■新宿で迷わない攻略法
新宿駅で迷わないための攻略法は、JR新宿駅のプラットフォームにある。JR新宿駅のプラットフォームは1階部分に全部で8面16線あり、ここを「山手線」「中央本線」「総武線」「埼京線」「湘南新宿ライン」「成田エクスプレス」「東武日光線直通特急」が遠ている。これらのプラットフォームは南北に並んでいる。つまり、線路は縦、南北方向に走ってこれら3つの駅を結んでおり、プラットホームも線路に平行している事から、南北方向に並ぶという訳だ。
JR新宿駅の場合、南北方向に並んでいるプラットフォームでプラットフォーム同士をつなぐ連絡通路は、東西方向に延びている。だからプラットフォームから階段を下りれば東または西の改札口に行く事ができる。階段を下りて東に行けば、東系の改札(東口、中央東口)、西に行けば西系の改札(西口、中央西口)だ。
一方、JR新宿駅は階段を上がればプラットフォーム上の連絡通路につながり、南系の改札(南口、東南口、サザンテラス口)、ルミネ口、新南口)につながる。新宿駅に北改札口はない。つまり「下は東西口、上は南口」というのが新宿駅の攻略法である。これを覚えれば、新宿駅で山手線や中央線を降りた時、迷う回数は必ず減る。
著者 田村 圭介
1970年生まれ。昭和女子大学 生活科学部環境デザイン学科 准教授
著者 上原 大介ゲームクリエイター 大学卒業後、機械組込系の開発会社に数年勤務した後、ゲームを制作するために独立。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.13 | 3分 | |
第1章 なぜ人は新宿駅で迷うのか | p.27 | 11分 | |
第2章 新宿に「新宿」とつく駅が10もあるわけ | p.49 | 11分 | |
第3章 新宿を解く三つの暗号 | p.71 | 16分 | |
第4章 新宿駅の東西を繋ぐ七つの抜け道 | p.103 | 17分 | |
第5章 新宿駅を行き交う364万人とはどういう人か? | p.137 | 16分 | |
第6章 西口地下迷宮の謎 | p.169 | 9分 | |
第7章 新宿駅の工事はなぜサグラダ・ファミリアより長いのか | p.187 | 8分 | |
第8章 新宿駅の未来 | p.203 | 6分 |