世界最大の食品・飲料会社ネスレの経営哲学。ネスレのマネジメントやリーダーシップについて、何が求められており、重要なのかが紹介されている一冊。
■ネスレのリーダーに求められること
「ネスレ マネジメント及びリーダーシップの基本原則」には、ネスレの管理職に求められる資質として、次のものが挙げられている。
・勇気、度胸、プレッシャーの中でも平常心を保てる能力
・学習能力、新しいアイデアに対するセンス、共感能力
・コミュニケーション能力、社員をやる気にさせ後押しする能力
・革新的な社風を創りだす能力
・水平思考
・信用できること、言行が一致していること
・変化を受け入れ、方向転換ができる柔軟性
・国際経験と異文化を理解する能力
・幅広い物事に興味があること
・一般教養があること
・責任ある行動を取り、身なりがきちんとしていること、健康であること
ネスレの企業文化の始まりは、創業者のアンリ・ネスレに遡る。彼は、仕事で海外を飛び回るうちに、各国の食習慣への強い興味が沸き、外国の伝統を尊重する姿勢を持つようになった。創業当初から、「共通価値の創造」(CSV)を示唆する考え方があった。つまり、グローバル戦略を取りながら、何よりローカルビジネス、ローカルとの関わりを優先する姿勢である。
自由を行使し、信頼を築き、責任を取る事ができるのは、組織ではなく個人である。この観点からすれば、企業を強くするのは社員である。従って、経営や企業理念の中心には社員がいなければならない。社員が会社の価値観や理念にコミットし、責任を引き受けなければ、企業は長期的な発展などできない。
企業の持続的繁栄のもう1つの重要な礎は、その商品、ブランド、サービスが常に顧客にとって意味のあるものである事だ。ネスレが売上目標を達成するには、毎日、世界の10億人の消費者に自発的にネスレの商品を選んで買ってもらわねばならない。ブランドイメージを革新し続けるなど、商品やブランドに投資する事で、この「意味」を維持し強化する事ができる。
ネスレが目指しているのは、未来の世代がネスレの提供する商品に革新性と親しみやすさの両方を感じてくれる事だ。そして、企業理念や社会的姿勢に対する消費者の関心はますます厳しく正当なものになっている。規則を守る事は企業として最低限の道徳的スタンスであり、それだけではもはや十分とはいえない。
企業はその経済的目標を株主、社員、消費者、取引先、国家経済など、利害関係者すべてに持続可能な価値が創造されるよう設定する必要がある。この価値は、共に創造しなければならない。唯一の方法は、すべての意思決定を持続可能性と長期目標に基づいて行う事だ。企業の真の力は、その規模や事業運営能力ではなく、理念や目標の力にある。
1951年生まれ。ノンフィクション作家 政財界を動かす人々やそれを揺るがす出来事など、社会経済的テーマに関心を持つ。
帯2 元国連事務総長 コフィ・アナン |
帯3 世界経済フォーラム創設者 クラウス・シュワブ |
帯 ハーバード・ビジネススクール教授 マイケル・ポーター |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 ネスレ主催の朝食会〜ダボス会議のもう一つの顔〜 | p.25 | 17分 | |
第2章 トップへの道〜グローバル企業の後継者はこうして選ばれた〜 | p.51 | 36分 | |
第3章 未来に向けた“青写真"〜ブランド再構築、新たな戦略領域、組織変革〜 | p.105 | 16分 | |
第4章 頂上に立てば、遠くまで見渡せる〜ブラベックの情熱、そして横顔〜 | p.129 | 37分 | |
第5章 CSV――共通価値の創造〜ネスレはなぜCSVに挑戦するのか〜 | p.185 | 30分 | |
第6章 ブラベックの次なる使命〜ネスレはウエルビーイング企業を目指すのか〜 | p.231 | 7分 |