従来、人間の知能は上げられないと考えられてきた。しかし近年、様々な研究によって、人間の知能は短期間で鍛えることができるという結果が示されている。著者自らが脳を鍛えるトレーニングに挑みながら、近年の知能研究を紹介している一冊。
■知能は上げられる
2008年の時点でも知能研究分野では、人間の知能は複雑すぎる上に、脳の生来的な性質と密接に結びついているため、どんなトレーニングをしても大きく変化させる事はできないという考え方が主流だった。確かに豊かな環境に子供を置く事で能力を発揮する機会が増大するのは確かだが、劇的に向上する訳ではないとされてきた。
この問題について、100年間で初めて新しい答えが現れた。スーザン・ヤーキとマーティン・ブッシュクールという2人のスイス人研究者が「Nバック課題」というコンピューターゲームを使って、流動性知能はトレーニングによって鍛えられるという研究結果を発表をした。
流動性知能とは、学習したり、新しい問題を解いたり、パターンを見つけたり、教えられていない事を理解したりするための基本となる能力だ。この能力は大学生くらいの青年期に最高潮に達し、少しずつ衰えると考えられてきた。
流動性知能はかなりの程度までトレーニングで向上する。しかもトレーニング量を増やすほど、向上率も高くなるという用量効果がある。その効果は被験者の能力に関わらず見られるが、元々低い人の方が効果が大きい。
短期記憶とは、提示されたものをすぐに繰り返す能力である。これはごく単純で、知能や問題解決とはほとんど関係ない。一方、作業記憶は覚えた事を利用する能力だ。数字を入れ替える、足す、奇数か偶数か判断する。言語に関しては、文を覚えるだけでなく意味を理解したり、その裏に何があるのかを考えたりする時に作業記憶が助けとなる。
著者 ダン・ハーリー
科学ジャーナリスト 『ニューヨークタイムズ』『ニューロロジートゥデイ』『ワイアード』など多数のメディアに寄稿。米国ジャーナリスト協会より「調査ジャーナリズム賞」を授与。
帯 東京大学薬学部教授 池谷 裕二 |
週刊ダイヤモンド 2017年 2/25 号 [雑誌] (弁護士・裁判官・検察官 司法エリートの没落) 作家 瀬名 秀明 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに:知能を上げる科学 | p.6 | 13分 | |
第1章:脳の作業空間を拡張する | p.24 | 18分 | |
第2章:知能をどう測るか | p.50 | 13分 | |
第3章:本当に効く脳トレとは? | p.68 | 28分 | |
第4章:よく知られた方法を検証する | p.109 | 22分 | |
第5章:頭をよくする薬と帽子 | p.141 | 16分 | |
第6章:さあ、脳の訓練を始めよう! | p.164 | 17分 | |
第7章:あなたはマウスより賢いか | p.189 | 15分 | |
第8章:知能向上の懐疑派たち | p.210 | 22分 | |
第9章:アルジャーノンが現実に | p.241 | 21分 | |
第10章:タイタンの戦い | p.271 | 29分 | |
第11章:最後の試験 | p.313 | 8分 |
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