心理学的視点に基づいて広告を分析して得られた知見をもとに、33の人を動かす広告手法を紹介している本。人に無意識に影響を与える方法が解説されています。
■抵抗感を認める
相手の抵抗感を認めたり、選択の自由を強調したりする事で、相手の迷いが消え、要求する側への好感度が高まり、要求が通る可能性が高まる。要求を出す前に「あなたは嫌がるでしょうが〜」と相手の抵抗感を認める、あるいは要求を伝えた後に「でも、受けるか断るかはあなたの自由です」と付け加える。研究論文によれば、要求を伝えた後に「決めるのはあなたの自由だ」と強調した場合は、要求を受け入れる確率が2倍になったという。相手に「ノー」と答える自由を与える事で、逆の答えを引き出す事ができ、要求する側が相手の判断を尊重していると印象づける効果もある。
■脳にやさしいメッセージを作る
私達は、脳がスムーズに自動処理できるような情報には、無意識の内に好感を抱いている。画像なら見やすい方が、テキストなら素早く読める方が、アイデアならすぐに理解できる方が脳に優しく、好感度が高い。
・製品のネーミングの発音のしやすさで、その製品の印象が変わる
・製品名に数字をつける事で、脳のスムーズな自動処理を促進できる
・文章のフォントが読みにくいほど、文章に対するイメージも悪くなる
私達が無意識の内に説得を受けやすいのは、次の3種のニーズがあるからだ。
①脳システムによるニーズ
私達の認知システムは、意識的な分析や言語の操作、沈思熟考といった働きをする一方で、私達が自分でコントロールできない行動を起こす働きもある。脳の自動的な働きに狙いを定めた広告は、脳が情報を意識的に分析できるようになる前に、見る人に目的通りの影響を及ぼす事ができる。
②社会的ニーズ
人間は社会的動物なので、私達は、友人であれ初対面の人であれ、他人から愛され、大事にされたいと思っている。他人の存在、他人の意見、他人の行動といったものは、依然として、私達を刺激する最大の要因であり、私達の考えやモチベーション、行動に影響を及ぼす最大の要因となっている。
③個人的ニーズ
私達は苦しみを回避し、楽しみを得ようと努力する。裕福さ、おいしい食事、安定した収入、安全を望んでいる。だから意識的に、将来の自分が危険を逃れ、満足するための最善の判断をしようとする。
広告がこのニーズに合った画像や言葉で作られたものなら、それを見た人は、広告からの説得に、完全に逆らう事はできない。
著者 マルク・アンドルース
1978年生まれ。心理学者、アートディレクター 2008年から、アムステルダムのクリエイティブエージェンシー、Andrews Degen社の共同創業者として、広告の制作、企業イメージの提案、エディトリアルデザイン、デジタル・プロジェクトの制作などに携わっている。
著者 リック・ファン・バーレン1975年生まれ。ラドバウド大学 教授 専門分野は「行動変化」。また、調査、コンサルタント会社D&Bのオーナーとして、クライアントたちが顧客や市民の行動に影響を与える手助けもしている。「社会的影響」の分野では、世界的な第一人者の1人であり、特に「模倣」や「社会的証明」の研究で知られている。
著者 マテイス・ファン・レイヴェン1980年生まれ。ラドバウド大学 准教授 専門分野は「社会的影響」と「説得」。現在は、行動を直接的、長期的に変化させるための高関与型の説得方法や、心理的抵抗を回避する方法などを中心テーマとして研究を進めている。
帯 東京大学薬学部教授 池谷 裕二 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
01 抵抗感を認める | p.16 | 3分 | |
02 脳にやさしいメッセージを作る | p.22 | 6分 | |
03 フット・イン・ザ・ドア・テクニック | p.32 | 2分 | |
04 夢のような効果をうたう | p.36 | 3分 | |
05 自分で自分を説得してもらう | p.42 | 3分 | |
06 別の役をキャスティングする | p.48 | 3分 | |
07 「社会的証明」の力を利用する | p.54 | 3分 | |
08 「保証」をつける | p.60 | 3分 | |
09 魅力的な顔のモデルを起用する | p.66 | 2分 | |
10 ユーモアをきかせる | p.70 | 3分 | |
11 「希少性」の力を利用する | p.76 | 2分 | |
12 「一時的な好意」を引き出す | p.80 | 3分 | |
13 おとりの選択肢を用意する | p.86 | 3分 | |
14 ザッツ・ノット・オール・テクニック | p.92 | 2分 | |
15 「単純接触効果」を利用する | p.96 | 2分 | |
16 「アンカリング」を利用する | p.100 | 5分 | |
17 アストロターフィング | p.108 | 1分 | |
18 商品を人間のように見せる、擬人化 | p.110 | 3分 | |
19 信頼できる顔のモデルを起用する | p.116 | 2分 | |
20 混乱に陥れ、リフレーミングする | p.120 | 5分 | |
21 メタファーを使う | p.128 | 5分 | |
22 実行プランを提案する | p.136 | 3分 | |
23 「返報性」の心理を利用する | p.142 | 2分 | |
24 言葉の力を利用する | p.146 | 3分 | |
25 性的表現を取り入れる | p.152 | 2分 | |
26 「権威」の力を利用する | p.156 | 3分 | |
27 「利益」のフレームと「損失」のフレームを使い分ける | p.162 | 5分 | |
28 「初頭効果」や「新近効果」を利用する | p.170 | 2分 | |
29 フィア・アピール・テクニック | p.174 | 3分 | |
30 ダブルスピークを使う | p.180 | 3分 | |
31 他人への「投影」を行う | p.186 | 2分 | |
32 ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック | p.190 | 2分 | |
33 サブリミナル効果を狙う | p.194 | 3分 |