なぜ5年間で売上が2倍になったのか
ゴディバジャパンへの社長就任が決まった時、いろいろな友人にこのブランドに対する印象を聞いてまわった。その反応は「高級チョコレート」である事は認めてくれたが「自分のために買ったことはない」「高級感がありすぎて、店に入りづらい」というものだった。最初にすべきは「お客様にもっとゴディバのショップに気軽に来て頂けるようにしなければならない」というものだった。
高級ブランドとしてのアスピレーショナル(憧れ)とアクセシブル(行きやすさ)は両立できる。この2つを実現する戦略プランを立てた。戦略プランが明確になると3つの柱を立てた。
①広告
テレビ広告を利用した「憧れ」のイメージ要素の強化
②製品
ギフトだけではない、自分へのご褒美としてのゴディバ「MY GODIVAキャンペーン」の提案。アイスクリームなど夏季用商品の開発。
③販売チャネル
コンビニエンスストアなどを含む新たな販売チャネルの開拓。47都道府県すべてへの直営店出店など販売場所の拡充。
この戦略により、すべての販売チャネルで売上を伸ばす事に成功した。過去10年間で4%程度の伸びしかなかった日本のチョコレート市場において、ゴディバは5年間で2倍の売上増を達成した。
「ゴディバを高級感がありながら、入りやすく、行きやすい場所にする」という矢は、お客様のハートに的中した。実際に店舗を訪れ、お客様の心と一体化し、無心になったからこそ、アスピレーショナル(憧れ)とアクセシブル(行きやすさ)は両立できると実感した。お客様との距離が消滅すれば、狙わなくても当たる。ビジネスは、常にお客様の立場に立って考える事が大切である。
問題の原因を探り改善する
ゴディバの社長に就任した時、既存店の売上は過去3年にわたって下がっている事がわかった。その原因は各店舗への来客数が減っている事が判明した。これはお客様にとって店舗、製品、ブランドの魅力が低下している事を示している。
そこで、店舗と商品、お客様とのコミュニケーション戦略を刷新し、ブランドの魅力向上に集中する事にした。そこで4つのポイントを改善した。
①お客様が入りやすく、何度も来店したくなる店舗づくりの工夫
重厚なイメージの店舗デザインを明るいものに変え、ディスプレイも楽しく工夫。
②商品と価格のバリエーションの増加
低価格帯の商品を増やし、気軽なプレゼントにも使って頂けるパッケージ商品拡充。
③売上が落ち込む夏期の商品開発
チョコレートアイスクリーム、チョコレートドリンクなどの商品開発。
④商品の美味しさを魅力的に伝えるテレビCM
効果的でない街頭や印刷媒体の広告から、テレビCMへ。