高度に複雑化した社会に対応するため組織が専門家たちの縦割りの「サイロ」になり、その結果変化に対応できない。こうした事例を紹介しながら、高度専門化社会におけるリスクと対策を解説している一冊。
■高度専門化社会の罠
21世紀の社会において、大規模な組織の多くは縦割りで、数え切れないほどの部署に枝分かれしており、協業は言うに及ばずコミュニケーションすらままならないケースが多い。我々は隔絶された心理的および社会的「ゲットー」に住み、自分と似たような人々とだけ交わり、共存する。職業の世界も専門化が進んでいる。技術がより複雑で高度になっている事も一因で、少数の専門家しか理解できなくなっている。この細分化した状態は「サイロ」と表現するのがぴったりである。サイロは部族主義を生むと同時に、視野を狭める。
サイロがスペシャリストの集まった部署やチームや場所を意味するのなら、間違いなく必要なものだ。しかし、サイロには弊害もある。専門家チームに分けられると互いに敵対し、リソースを浪費する事もある。互いにコミュニケーションできずに、危険なリスクを見逃す事もある。組織の細分化は情報のボトルネックを生み出し、イノベーションを抑制しかねない。何よりサイロは心理的な視野を狭め、周りが見えなくなるような状況を引き起こし、人を愚かな行動に走らせる。
分類システムが過度に硬直化し、サイロが危険なまでに強固に根をはると、我々にはリスクだけでなく魅力的なチャンスも見えなくなってしまう。
複雑な世界にはスペシャリストや専門家集団が必要だが、それと同時に総合的な、柔軟な視点で世界を見る必要がある。大切な事は、まずサイロの存在を認めること、続いてその影響についてしっかり考える事である。
著者 ジリアン テット
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙アメリカ版 編集長 FT紙有数のコラムニストでもある。1993年にFT紙に入社する前は、文化人類学者だった。旧ソ連のタジキスタンの小さな村に三年暮らし、結婚慣習を観察している。
日本経済新聞 |
週刊ダイヤモンド 2016年 4/2 号 [雑誌] (三井・住友 名門烈伝) 紀伊國屋書店新宿本店仕入課係長 大矢 靖之 |
週刊エコノミスト 2016年05月31日号 [雑誌] 明治学院大学教授 中尾 茂夫 |
PRESIDENT WOMAN(プレジデント ウーマン)2018年1月号(いま読み直したい感動の名著218) |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.6 | 4分 | |
序 章 ブルームバーグ市長の特命事項 | p.11 | 24分 | |
第1章 人類学はサイロをあぶり出す | p.39 | 29分 | |
第2章 ソニーのたこつぼ | p.73 | 32分 | |
第3章 UBSはなぜ危機を理解できなかったのか? | p.111 | 29分 | |
第4章 経済学者たちはなぜ間違えたのか? | p.145 | 32分 | |
第5章 殺人予報地図の作成 | p.183 | 25分 | |
第6章 フェイスブックがソニーにならなかった理由 | p.213 | 30分 | |
第7章 病院の専門を廃止する | p.249 | 27分 | |
第8章 サイロを利用して儲ける | p.281 | 27分 | |
終 章 点と点をつなげる | p.313 | 12分 |
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