モノが売れない時代の差別化の要素は「ブランド」にある。ソーシャルメディアの台頭によって、価値観が変化している現代において、ラグジュアリーブランドがどのように変化に対応しているのかを解説し、売らずに売る方法を紹介しています。
■売ろうとして売ることが難しい時代
企業が多額の予算を使ってメディアに広告掲載してもらっても、ユーザーは広告よりもソーシャルメディアから流れてくる友人の口コミを重視している。口コミをコントロールするのは至難の業。ソーシャルメディアが普及した事で、企業が能動的に「売ろうとして売る」事が非常に難しい時代になった。
この新しい消費者と向き合っていく上で、鍵になるのは「ブランド」である。ブランドによって消費者との絆が生まれれば、商品に特別な意味が与えられ、新機能や安売りに頼らなくても、他の商品との差別化が実現できるようになる。
■デジタル戦略の重要性
ソーシャルメディアが台頭し、それが人々のライフスタイルも変えてしまった近年、ラグジュアリーブランドも新しい消費者に正面から向き合おうとしてきている。人々は広告に「いいね!」をなかなか押してくれないが、友人の体験には「いいね!」を押す。これを企業から見ると、彼らのコミュニティに入り込み、消費者が感動するような体験をデザインする事ができれば、それは「良い口コミ」となって広まっていくと考える事ができる。
ソーシャルメディア時代には、オンライン上の様々なコミュニティに点在する消費者と多様な接点を持つこと、そして、そんな消費者とブランドのファンとして絆を結んでいくためには、企業からの一方的な宣伝を押し付けるのではなく、オンライン上でもファンの目線に立った「体験」を提供する事が重要である。
最近の調査では「お買い得」も「最新の」も「流行の」も、現在はそれほど人々に強く訴える要素ではない事がわかってきている。それよりも「本物の」「親切な」「正直な」ブランドであること、つまり「信頼に足る」ブランドであると自ら示す事の方が、人々から支持され、差別化につながる。
ソーシャルメディアによって「人や企業の中身」や「社会の裏側」が見えるようになってきた現代では、そうしたオープンな態度をとる事が、企業やブランドの評判を高め、消費者とコミュニケーションしていく上で必要になってきている。
著者 小山田 裕哉
1984年生まれ。ライター・編集者 大学卒業後、映画業界、イベント業などの職種を経て、フリーランスのライターとして執筆活動を始める。 扱うジャンルは幅広く、ビジネス・カルチャー・ファッション・広告・時事問題など、「アイドルからラグジュアリーブランドまで」をテーマに、さまざまな媒体で執筆・編集活動を行っている。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊東洋経済 2016年3/5号 [Amazon特集] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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Prologue:スマートフォンとソーシャルメディアの組み合わせは最悪だ | p.9 | 10分 | |
Capter1:なぜメルセデスはエンジン工場をネット公開したのか | p.29 | 22分 | |
Capter2:デジタルネイティブ世代をのめりこませるには | p.73 | 19分 | |
Capter3:ネット口コミの悪評とどう向き合っていくのか | p.111 | 18分 | |
Capter4:人々がブランドに求めるのは「お買い得」か「信頼」か | p.147 | 18分 | |
Capter5:ブランドが売るのは「モノ」ではない | p.183 | 18分 | |
Capter6:「若者の車離れ」をあきらめないために | p.219 | 15分 | |
Capter7:未来の消費者はリアル店舗に何を求めるのか | p.249 | 20分 | |
Epilogue:ラグジュアリーブランディングはお金持ちの話だけではない | p.289 | 10分 |
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