アメリカの先進事例
・バイオメトリクス社
数分で終わる20のゲームを通じて、脳科学的視点から認知および感情面における性格を測定し、各人が自らにあったキャリアを構築する最適な企業に紹介するという人材マッチングサービスを提供する。企業は、客観的な人材データを手に入れる事ができ、紹介した人材のリクルートメント成約率が1〜10%に上がる。選考に要する期間が、半年から3ヶ月程度に短縮されるというメリットもある。さらに、昇進や人材配置を決定するのにも利用できる。
測定にゲームを利用するのは、より客観的なデータを手に入れるためだ。質問に答える形だと、質問で問われている事がある程度予測でき、結果として主観バイアスがかかったデータになってしまう。彼らはその解答された内容や点数にはあまり注目しない。むしろ、そのプレイヤーが、どの問題にどれくらいの時間をかけて取り組んでいるか、問題を解いている間にマウスをどのように動かしたか、パソコンの画面を見る目の動きといった事に関する、微細で膨大なデータに着目する。
・プレディクト社
人材のレジュメ情報から、どのようなキャリアを選択するべきかを算出し、また詳細な職種とのマッチング度をスコアにして転職会社に提供する。同社は公開されている膨大なレジュメ情報を読み込み、自然言語処理でデータを作成し、深層学習を行う事によって、どのような職種とマッチしているかをチェックする。こうして得られた転職希望者の適職データは、まず、転職サイトの付帯サービスとして利用されている。
レジュメを読んでスクリーニングを行う事は、転職会社や人材募集企業にとって相当な重荷だ。この作業をAIに任せる事ができれば、業務は一気に効率化される事となる。
人事の知を形式知化する
「人事の知」を形式知化するためには、科学的なアプローチが必要となる。そのための非常に有効な手段が、AI×ビッグデータである。科学的アプローチを採る事ができれば、エントリーシートや履歴書を細かく分析し、評価する事が可能だ。また、SNSでどんな内容を書いているかも評価の対象とする事ができる。在籍する社員なら、メールでどんなテキストを書いているかもデータに取り入れる事ができる。採用や評価のためのデータが、量・質ともに一気に増える事になる。
このままAI×ビッグデータが進化すれば、それぞれの企業の風土を加味して、「この会社の風土で活躍できる人材は、こんな人間」というところまではじき出せる時代となる。