今読むべき優良ビジネス書が
すぐ見つかり、読んだ本を
しっかり自分の知識にするサイト

本を検索する

カテゴリーから探す

人気のタグ

お知らせ


Android無料アプリ配信中
2016/01/21更新

見えない巨人―微生物

210分

3P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

対象読者:

アマゾン詳細ページへ

微生物は巨大な生き物

大腸菌は、肉エキスなどの入った栄養豊富な培地の中では37℃で20分に1回分裂して、倍々に増えていく。この培地の中で1匹の大腸菌が48時間分裂を続けたら、子孫の大腸菌の全体積は地球の約4000倍になる。もちろん、そんな値に達するはるか手前で培地の栄養分は食べ尽くされて、増殖を続ける事はできなくなってしまうが、この計算は最適な条件の中に置かれた時の一部の単細胞の微生物の増える力が、多細胞の動物や植物に比べてどんなに巨大であるかを教えてくれる。

その小さいサイズに加えて乾燥などに対する強い耐性によって、微生物は地球のほとんどあらゆる場所に拡がっている。陸上の土壌圏や河川、海洋などの水圏は、膨大な量と種の微生物の豊かな住処である。例えば微生物の中でも最小のウイルスの海洋中での数は1mlあたり数億個にのぼり、それは細菌の10〜100倍にあたり、総重量はシロナガスクジラ7500万頭に相当する。約4000㎡の肥沃な畑地の表層15cmの土壌が含んでいる微生物は約2tで、その呼吸による酸素吸収量は人間数万人に相当する。体が小さい微生物の体重当たりの呼吸量は、人間に比べて数百倍と飛び抜けて高いのである。生物の代謝活性は体重の3/4乗に比例する、つまり体重当たりの代謝活性は体重の1/4乗に反比例するという「クライバーの法則」は、象からネズミにとどまらず細菌にまで当てはまる。微生物とは、サイズを小さくする事によって高い代謝活性と増殖能力を手に入れた生き物だといえる。微生物が有用物質の生産者として工業的に利用されるのも、有機物を分解除去する生態系における分解者として重要な役割を果たすのも、この特性が土台になっている。

相互作用の環でつながる微生物

大腸菌のような単細胞の微生物でも個体の話は無関係ではない。多くの細菌はばらばらに分散した浮遊細胞の集まりで、1つの体として統一された体制をつくっている多細胞生物の個体とは違うように見える。しかし、様々な細菌の浮遊細胞が仲間同士で信号を伝える化学物質を周りに分泌して、それによって集団として目的にかなった行動を取る事がわかってきた。これまで浮遊細胞としてしか存在しないと思われていた細菌が、自然界では条件によってバイオフィルムと言われる集合体をつくり、その中で協調した振る舞いをする事も認められている。自然界では種類の違う動植物が互いに助け合う共生現象がよく知られているが、それが種の違う微生物の間でも広く起こっている。