12人の研究者の事例をもとに、生涯を賭けるテーマを選ぶとはどういうことか、研究者とはどういう生き方をするのかを考えさせる一冊です。東工大の人気講義を書籍化しているものです。
■生物はなぜ光るのか 〜下村脩の研究人生〜
生物発光の研究で知られる化学者の下村脩先生が2008年にノーベル賞を受賞されたのは1962年の研究で、アメリカ西海岸に浮遊するオワンクラゲから緑色に光る蛍光タンパク質GFPを単離した功績である。下村先生が単離したGFPを異種細胞に導入して発行させる事に成功したのが同時受賞したマーチン・チャルフィーである。つまり生命現象を目に見えるようにした、光る標識にした事が評価された。こちらは1992年に発表された研究である。
3人目の同時受賞したロジャー・チェンはGFPの立体構造を解明して、緑色以外の多様な人工蛍光タンパク質を作成し、複数の生命現象を同時に観察したという理由で受賞した。1994年の研究である。下村先生の研究は1962年のものだが、後の2人は90年代の研究である。
ロジャー・チェンの人工蛍光タンパク質の研究は様々な研究で利用されていき、2007年には脳回路内のたくさんの細胞を一度に可視化する方法が開発された。GFPはいまや生命科学の研究には欠かせないものとなっていて、現在はがんの転移の追跡まで可能となっている。
研究者はどうやってテーマを選んだのか。大きく分けて4つある。
①小さい頃から何らかのビジョンがあった
②何がやりたいのかよくわからないけれどもとりあえず入ってみて、じわじわとテーマに近づいていった
③素敵な偶然、セレンディピティ
④人とは違う考え方をした
著者 最相 葉月
1963年生まれ。ノンフィクションライター 出版社、PR誌編集事務所勤務を経てフリーの編集者兼ライターとなる。 著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)『青いバラ』『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞、日本推理作家協会賞、日本SF大賞、星雲賞)など。
週刊ダイヤモンド 2016年 1/9 号 [雑誌] (営業大転職時代) 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか ガイダンス | p.6 | 9分 | |
1 生物はなぜ光るのか 下村脩の研究人生 | p.22 | 11分 | |
2 感染症にかける ゲスト 山内一也 | p.40 | 21分 | |
3 偉人伝から遠く離れて マリー・キュリーと弟子・山田延男 | p.75 | 8分 | |
4 原子核物理から心理の道へ ゲスト 佐々木玲仁 | p.88 | 12分 | |
5 遺伝子工学と知らないでいる権利 ウェクスラー家の選択 | p.108 | 16分 | |
6 禁断の不均衡進化説 ゲスト 古澤満 | p.134 | 15分 | |
7 実践ショートショート 星新一と要素分解共鳴結合 ゲスト 江坂遊 | p.159 | 22分 | |
8 空白の天気図と観測精神 広島地方気象台と猿橋勝子 | p.195 | 12分 | |
9 二つの大震災から見えたもの ゲスト 石田瑞穂 | p.214 | 17分 | |
10 ひとはなぜ回復するのか 中井久夫と統合失調症の寛解過程論 | p.242 | 15分 | |
11 イリュージョンと脳の可能性 ゲスト 柏野牧夫 | p.266 | 23分 | |
12 生物模倣のテクノロジー ジャニン・べニュスとバイオミミクリー | p.303 | 10分 | |
あとがき | p.319 | 2分 |