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「生き方」が最後の商品

ライフスタイルという言葉が氾濫する中、ライフスタイル・マガジンと呼ばれる雑誌が内外で急増している。さらに既存の雑誌がそれまでのファッションやカルチャーを基軸にする方針を変え、ライフスタイル全般について広く取り上げるようになってきた。このライフスタイル化の波は雑誌だけにとどまらない。流通業界でも単なるファッションや雑貨だけでなく、生活提案を謳ったライフスタイル・ショップ化という新業態が続いており、勢いは増している。

ファッション主体からライフスタイルを軸にした消費への移行は、ファッション業界の必然的な成熟でもあり、それ以上に消費者の成熟でもある。物欲レスな時代は、よりモノよりコトへ、見えるものから見えないものへ価値を置く方向へ進んでいる。ライフスタイル=生き方を消費する時代は、消費主義の可能性と限界の両面を提示して、次なる地平に躍り出ようとしている。

物欲なき世界における幸福

もはや物が幸福のシンボルではないのだとしたら、幸福を示すものは何になるのだろうか。来るべき「物欲なき世界」は次のようにまとめられる。

まず私達の日常を取り巻く日用品/コモディティは、グローバリゼーションの中でますます低価格化するだろう。一方で高級ブランドは意図的にさらに高級化し、一部の富裕層を除いて人々はそれに対する憧れや渇望を失い、または時代遅れと見なすようになる。またオーダーメイドやハンドメイドはより普及するだろうが、それらは属人性が強すぎるがゆえにその人のブランディングにはあまりならない。そうなると、自分が買うモノがその人を雄弁に語る事が少なくなる。日用品以外の、憧れのある、夢のある消費というものが急激に減る時代で、人々は自分の欲望の再確認を迫られるだろう。

一方で「私が欲しいものは、私が作る」という考えは、メイカームーブメントの恩恵もあり、ますます定着するだろう。欲しいものは、自ら関わる、作る、交換する。受動的消費から、主体的かつ参加的消費/生産が奨励されるだろう。

市場で求められていくものの価値基準も変わるだろう。新しい、見た目がいい、機能が多い、高級といった価値よりも、関わっている人の顔が見える、信用/信頼できる、長く使える、公益的といった価値に重きを置かれるようになる。

低成長下、さらには定常型社会に向う中で、シェアやレンタルが当たり前の「物欲なき世界」に突入し、買い物リストを埋める事に積極的な意味を持たなくなると、幸福のあり方が変わらざるを得ない。そこにおいて幸福は、より個人的で、かつ普遍的な価値を共有できるものに向う。つまり個人の思想・心情が強く含まれているが、他者とも価値観を共有できる「いい物語をもった人生」が最大の幸福になるだろう。