ドン・キホーテ創業者が、起業の経緯からドン・キホーテ成功の要因、流通業の要諦までを語っている一冊。26期連続増収増益の小売業の成功物語。
■起業を志した理由
絶対にサラリーマンになりたくなかった。自分のやり方で勝負したかった。必然的に他人と衝突する。「嫌なやつ」だと思われる。孤立するから、ますます尖る。その繰り返しだ。小・中学校時代は一貫してガキ大将を通した。高校生二学年の三学期から、それまで全くした事がなかった勉強に猛然と取り組み始めた。大垣という退屈な町と実家から、一刻も早く出て行きたかったからである。東京行きは、「難関校合格」という条件付きながら認められた。翌春、慶應義塾大学法学部に合格する事ができた。
だが、大学に通い出して早々、強烈な嫉妬心と劣等感、悔しさと無力感にさいなまれる事になる。周りの同級生達は、やたら垢抜けてカッコいい。それに対して、自分は田舎のイモ兄ちゃん丸出しで、何のコネも取り柄もない貧乏学生である。この時、「サラリーマンになったら、オレは永久にこいつらに勝てないだろうな」と思った。「どんな事になっても、こいつらの下で働く人間にだけは、絶対になりたくない。ならば自分で起業するしかない。ビッグな経営者になって、いつか見返してやろう」と誓った。これがビジネス人生における原点だ。
■ドン・キホーテの急成長の要因
①ナイトマーケット
ドンキ最大の成功要因は「ナイトマーケット」の発掘とその開拓にある。当時、店が最も混み合う時間帯は夜10時〜午前2時、アイドルタイムは午前10時〜午後2時と、一般的な店と完全に逆転していた。ドンキは今どきの若者の「夜の宝探しの場」として、彼らの潜在ニーズを顕在化させた。
②CVD+A
「より便利に(CV)」「より安く(D)」「より楽しく(A)」。世間に便利な店はあまたある。安い店もある。「便利で安い」に留まらず、「楽しさ」を付加する事により、初めて深夜営業も可能にする。
③トイレットペーパーからスーパーブランドまで
日常生活用品から食料品、雑貨、家電製品、高級ブランドまで、1ヶ所の店で何でも買う事ができる。約300坪の売場で約4万品目の品揃えがある。
④圧縮陳列
ドンキの広さはスーパーの1/5〜1/10程度しかない。だからこそ「圧縮陳列」が不可欠になる。これにより「売場探検」「宝探し」といった買い物の楽しさにつながり、ドンキにしか出せないエンターテイメントな雰囲気と魅力を醸し出す。
⑤脇役商品
知名度はないが中身のしっかりした価値ある商品を指す。例えば家電OEM製品の下請けメーカーが製造した商品など。脇役商品は圧倒的に仕入値が低い。
⑥POP洪水
面白さ、楽しさを演出する。まるで洪水のように、店内の至るところにカラフルなPOPが顔を出している。
⑦権限委譲と「主権在現」
仕入れから値付け、売場構成まですべての権限を各店の現場に丸投げする徹底的な「個店主義」を貫いている。各売場担当者には大幅な仕入権限と自由裁量権が与えられている。
⑧変化への対応力と「顧客最優先主義」
主権在現だからこそ、柔軟かつ臨機応変な変化への対応力がある。これこそドンキ最大の強みであり、流通業の要諦である。ドンキの仕事には「マニュアル」はない。もう1つの要諦は「顧客最優先主義」だ。
⑨顧客親和性
ドンキの現場従業員は、各売場で基本的に顧客親和性の高い者が優先的に配置される。例えば、ターゲットが若者の場合、若者が主体となって売らなければ商品は売れない。
⑩モノではなく「流通」を売る
流通とは生産と販売の間に介在し、それをスムーズにつなぐ付加価値の一切を指す。独自の集荷・品揃え、見せ方、売り方、価格、各種プロモーション、店づくり、さらに商品担当者の思いなどである。こうした流通行為が、モノに新たな命を吹き込み、他店では味わえない購買体験を提供している。
著者 安田 隆夫
1949年生まれ。ドン・キホーテグループ創業会長兼最高顧問 大学卒業後、フリーターを経て、1979年ディスカウントショップ「泥棒市場」を創業。翌1980年株式会社ジャスト(現ドン・キホーテ)を設立。 泥棒市場は繁盛店となるも5年で売却。1983年株式会社リーダーを設立し卸売業に参入。同社を関東有数のディスカウント問屋に成長させた。 1989年東京・府中市にドン・キホーテ1号店を開業、以来、急速な多店化を進め1996年12月に日本証券業協会に店頭登録し株式公開(現JASDAQ市場) 。 2015年にドンキホーテホールディングス代表取締役会長兼CEOを退任。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに 若者よ、「はらわた」を振り絞れ! | p.3 | 4分 | |
第1章 絶対に起業してみせる | p.17 | 26分 | |
第2章 ドン・キホーテ誕生 | p.65 | 23分 | |
第3章 禍福はあざなえる縄の如し | p.107 | 18分 | |
第4章 ビジョナリーカンパニーへの挑戦 | p.141 | 25分 | |
第5章 不可能を可能にする安田流「逆張り発想法」 | p.187 | 23分 | |
終 章 波乱万丈のドン・キホーテ人生に感謝 | p.229 | 6分 |
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