「知らない」という境地に立つことで、新しい学びと知識が得られる。知識があることの弊害を説き、知らないことを活かすための方法を紹介しています。
■「知っている」ことはいいことか?
私達自身の脳は、知識があること、確信できる事を望む。最近の神経科学研究によれば、人間の脳が最適な機能を果たすためには確信が必要である。確信が揺るがされると、神経学的に身体的攻撃と同じ苦痛を感じる。
私達は知識を貪欲に求める。知識は素晴らしいものだ。知識があれば褒美が得られ、尊敬され、昇進して、金持ちになり、健康になり、自信もつく。しかし、知識にもデメリットがある。知識が足枷になりかねない場面でも、私達は知識にしがみつく。そして、新たな学びと成長を阻まれるという、パラドックスに陥っている。
専門性を評価されている人間は、往々にして、その領域の外をしっかり見ようとしない。そうしようというインセンティブがない。また、専門性が高くなればなるほど、視野が狭くなる場合もある。「知っていること」に焦点を置くあまり、知っている事を疑ったり、知らないと認めたりする事ができなくなる。
何かを知りたい時、それを「知らない」ままでいる状態はつらい。つらい状態は避けたいが、人として生きる以上、すべてを知る事は不可能だ。だから私達は答えを知る人の方を向く。専門家、リーダー、その他の知っていそうな人。一方で、自分に多少なりとも知識がある時は、その知識が自分の手から消えていく事を恐れる。私達は神経学的に、予測のつかないものを避け、確実なものを好むようにできている。
だが、この世界は不確実だ。複雑で不安定だ。自分の知識がおよぶ範囲ぎりぎりの境界線に立たされると、私達は既存の知識にしがみつくか、手っ取り早い解決を試みるか、あるいは状況そのものをそっくり投げ出そうとする。
しかし、境界線から逃げ出さずにいれば、全く新しい学び、創造性、喜び、不思議と出会えるかもしれない。「知らない」というのは状態ではなく動作だ。無知と対峙するプロセスである。
著者 スティーブン デスーザ
企業コンサルタント ディーパーラーニング 取締役 エグゼクティブ研修を専門とし、リーダーシップ、組織開発、ダイバーシティーなどをテーマに研修・講演などを行なう。 アクセンチュア、バンクオブアメリカ、クレディスイス、ゴールドマンサックスなどが主なクライアント。 IEビジネススクール 准教授
著者 ダイアナ レナー企業コンサルタント Not Knowing ラボ所長 組織戦略、アダプティブ・リーダーシップ、組織の複雑性理論などが専門。ハーバード大学ケネディスクール、アデレード大学、テキサス大学などでリーダーシップ・プログラムを教える。
帯 マサチューセッツ工科大学 上級講師 オットー・シャーマ |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊ダイヤモンド 2016年 2/6 号 [雑誌] (儲かる農業) 紀伊國屋書店新宿本店第二課係長 竹添 嘉子 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.5 | 3分 | |
CHAPTER 1 「知っている」はいいことか? | p.18 | 21分 | |
CHAPTER 2 専門家とリーダーへの依存 | p.51 | 15分 | |
CHAPTER 3 「未知のもの」の急成長 | p.75 | 13分 | |
CHAPTER 4 既知と未知の境界 | p.96 | 21分 | |
CHAPTER 5 暗闇が照らすもの | p.128 | 23分 | |
CHAPTER 6 カップをからっぽにする | p.164 | 26分 | |
CHAPTER 7 見るために目を閉じる | p.204 | 20分 | |
CHAPTER 8 闇に飛び込む | p.235 | 33分 | |
CHAPTER 9 「未知のもの」を楽しむ | p.286 | 27分 | |
APPENDIX | p.328 | 14分 |
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