ビジネススクールでは最先端の経営学を学ぶことができない。米国で経営学研究に携わってきた著者が、経営学においての様々な最近の知見をわかりやすく解説している一冊。競争戦略、イノベーションから組織論まで事例を含めて、様々な視点が得られます。
■代表的な2つの競争戦略
①ポーターの競争戦略(SCP戦略)
「業界内のライバルと比べて、自社がどのような製品・サービスを顧客に提供していくか」を考える。「差別化戦略」と「コストリーダーシップ戦略」の2種類に分かれ、どちらを重視するかというポジショニングが求められる。
②リソース・ベースト・ビュー(RBV)
「企業の競争優位に重要なのは、製品・サービスのポジションではなく、企業の持つ経営資源(リソース)にある」とする。優れた人材、他社がまねできない技術といった自社の「強み」を磨く事で企業は安定して高いパフォーマンスを実現すると考える。
SCPとRBVの主張は対照的でどちらが有用か議論されてきた。しかし、そもそも両戦略はそれぞれ適用範囲が限定的である。有効は範囲が違うから比較する事に意味がないかもしれない。これを考えるのに競争戦略を考える上での「3つの競争の型」を理解する事が重要である。
■経営学者は「役に立つ」ことに興味がない
経営学が「役に立つかどうか」は、欧米を中心とした経営学者にとっては、重要な関心事ではない。その理由は「ハーバード・ビジネス・レビュー」のような実務家を対象とした雑誌への掲載が学術業績にならない、という制度的な背景もある。しかし、根底にあるのは、学者にとって経営学を探求する推進力となっているのが、彼らの「知的好奇心」だからである。
この分野で「優れた研究」と評価されるには「厳密性」(厳密な理論展開と実証分析)と「知的に新しい」という2つの評価軸がある。これに加えて「実務に役に立つ」も同時に追求できれば良いが、ある役立ちそうな教訓が他企業にも当てはまるのかという厳密性まで同時に追求する事は難しい。
■経営学は「答え」を出すものではない
経営学は、それぞれの企業の戦略・方針に「それは正解です」「間違っています」と安直に答えを出せる学問ではない。企業は一社ごとに、直面する事業環境も社内事情も異なるからである。経営学が提供できるのは次の2つだけである。
①理論研究から導かれた「真理に近いかもしれない経営法則」
②実証分析などを通じて、その法則が一般に当てはまりやすいかの検証結果
この2つを自身の思考の軸・ベンチマークとして使う事が、経営学の「使い方」である。
著者 入山 章栄
早稲田大学ビジネススクール准教授 三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。 同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日本経済新聞 専修大学教授 徳田 賢二 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.2 | 2分 | |
Part1 いま必要な世界最先端の経営学 | p.11 | 19分 | |
Part2 競争戦略の誤解 | p.41 | 20分 | |
Part3 先端イノベーション理論と日本企業 | p.73 | 24分 | |
Part4 最先端の組織学習論 | p.111 | 22分 | |
Part5 グローバルという幻想 | p.147 | 17分 | |
Part6 働く女性の経営学 | p.175 | 16分 | |
Part7 科学的に見るリーダーシップ | p.201 | 16分 | |
Part8 同族企業とCSRの功罪 | p.227 | 15分 | |
Part9 起業活性化の経営理論 | p.251 | 24分 | |
Part10 やはり不毛な経営学 | p.289 | 16分 | |
Part11 海外経営大学院の知られざる実態 | p.315 | 24分 | |
おわりに | p.354 | 4分 |
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