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2015/12/02更新

植物は<知性>をもっている―20の感覚で思考する生命システム

197分

4P

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植物にも知性があるのか

植物は、人間と同じく予測し、学習し、記憶し、仲間どうしでコミュニケーションをとっている。植物の優れた生命システムを解説しながら、植物の能力こそ知性と呼べると説く。


■動かないことを前提とした進化
5億年前、植物と動物は分化し始め、地球最初の生物たちは異なる2つの生き方を選びとった。植物は定住民の生活スタイルを選び、動物は遊牧民の生活スタイルを選んだ。定住の生活を選んだ植物は、地面、空気、太陽から、生きるために必要なものすべてを引き出さなければならなかった。それに対して動物は、栄養をとるために他の動植物を食べなければならず、運動に関する様々な能力を発達させていった。

時が経つにつれて、定住する生物として進化するか、移動する生物として進化するかという選択が、生物の体の構造と生き方に大きな違いをもたらした。動物は「動く」事を前提として、防御、栄養摂取、繁殖を行う道を選んだ。植物は動物を同じ事を「動かない」ままで行う道を選んだ。そのせいで植物は、様々な問題を解決するために、全く独自の手段を見つけなければならなくなった。

超短要約

植物にも人間と同じように五感がすべて備わっている。

①視覚
植物は光を取り込み、利用し、光の質と量を識別する事ができる。光は植物が光合成によってエネルギーを補給するための基本的要素である。そのために植物は視覚能力を強化してきた。植物はうまく光を受けるために葉を動かし、体の位置を修正しながら、光の射す方向に向かって成長していく。植物の内部では、いくつかの化学物質が光受容体として機能しており、自分の体の各部分に伝達する事ができる。

②嗅覚
植物のにおいの感覚器は、体全体に散在している。細胞の表面には、揮発性物質をとらえる受容体が備わっている。植物は「におい」の微粒子(BVOC)によって、周囲の環境から情報を得たり、植物同士や昆虫とのコミュニケーションをはかったりしている。BVOCには、植物用のSOS信号も含まれており、危険が迫っている事を、近くに生えている植物に警告する。警告を受けた植物は、例えば虫の攻撃に対抗し、葉を消化できなくする化合物を出したり、その葉を有毒にする化合物を作り出したりする等の防衛行動をとる。

③味覚
植物の味覚は、栄養素として使われる化学物質を取り込む受容体の事を指す。植物の根は地中でそうした化学物質(硝酸塩、リン酸塩、カリウム等)を探しまわる。さらに最近の研究では、植物の世界では、動物から栄養を摂取する事がかなり広範に行われている事がわかった。

④触覚
植物の表皮細胞には特別な受容体が一杯で、植物が何かに触れたり、振動が届いたりした時に受容体が作動する。

⑤聴覚
植物は蛇やミミズのように耳介をもたない動物と同じように、土の振動によって音を聞く。音を聞く能力は、植物の体全体が持っている。

植物の感覚は人間よりもずっと鋭く、私達の持っている五感以外に、少なくとも15の感覚を備えている。例えば植物は、重力、磁場、湿度を感じて、その量や大きさを計算できるし、いろいろな化学物質の土壌含有率も分析できる。こうした感覚は根や葉に備わっている。

植物は、これら動物と異なる仕組みで、大量の環境変数を記録し、そのデータをもとにして、養分の探索、競争、防衛行動、他の植物や動物との関係など、様々な活動にまつわる決定をくだす。この植物の能力を知性と呼ばずに何と呼ぶのか。

著者 アレッサンドラ・ヴィオラ

ジャーナリスト フリーランスの科学ジャーナリストで、さまざまな新聞や雑誌に数多くの記事を書いている。2007年にアルメネーゼ‐ハーバード財団はイタリア科学ジャーナリスト協会の協力を得て、彼女の書いた記事を年間最優秀科学記事として選出し、研究奨励金を支給した。 2011年にはジェノヴァ科学フェスティヴァルの司会を務める。イタリア公共放送局RAIで、ドキュメンタリー番組の監督や現地レポーター、テレビ番組やテレビアニメのシナリオライターとして活躍している。

著者 ステファノ・マンクーゾ

イタリア・フィレンツェ大学農学部教授 フィレンツェ農芸学会正会員 フィレンツェ大学付属国際植物ニューロバイオロジー研究所(LINV)の所長を務め、国際的な「植物の信号と行動学会」の創設者のひとり。 La Repubblica紙で、2012年の「私たちの生活を変えるにちがいない20人のイタリア人」のひとりに選ばれている。

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帯
俳優 いとうせいこう
日本経済新聞 日本経済新聞
サイエンスライター 内田 麻理香

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.13 4分
第1章 問題の根っこ p.19 18分
第2章 動物とちがう生活スタイル p.45 16分
第3章 20の感覚 p.69 30分
第4章 未知のコミュニケーション p.113 33分
第5章 はるかに優れた知性 p.161 26分
おわりに p.200 5分

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