「ニッポンのジレンマ」「爆笑問題のニッポンの教養」「英語でしゃべらナイト」等を手がけるNHKのプロデューサーが、新しい物事を発想することについて語った一冊。
■「よくまとまっている」のワナ
番組の企画書は多くの場合、A4・1枚、簡潔に表現される事が大事とされている。その企画書を読んでくれる多くの人々に誤解を招かぬよう、わかりやすく伝えるために必要という訳である。
しかし、注意しなければならないのは、その「フォーマット=形式」にとらわれ過ぎてはいけない、という事である。企画書を前にして、うまくまとまらないという経験、自らの思いが既存の様式の中にハマらずもがくという経験は、創造的なプロセスにおいて、とても重要な要素をはらんでいる。
企画会議は、人々のコンセンサスを得るために必要なプロセスである。そこでフェアな議論をするためには、用紙、分量、様式の平準化は避けられない。しかし、この議論の俎上にのせるための平準化の作業で、ある種モヤモヤとした形なきアイデアのエネルギーが削がれていく事には敏感であるべきである。
1つの結果は、他の選択肢へのスタートである。本当にいい事か悪い事かはわからない。いろいろな見方ができる。視点の相対化は大事である。前提としている思考、価値観を明らかにする事のない判断は、ある枠組みの中の「正解」でしかない。様々な角度からトータルに考えれば、答えが変わる事はいくらでもありえる。だからこそ、「肯定」する精神が大切である。
思考のフレームを変える柔軟性、メタレベルの思考の大切さは、乱世の時代、より意識されてもいい。万物は「反転」する。あるところまでの「正解」がある時「不正解」となり、またさらに状況が進むと「正解」になる、そんな状況が想定できる時、じっくり慌てず騒がず、時の流れ、あるスパンで物事を見極め、推移を見守る事もまた知恵である。
時に「沈潜」し「内省」すること。「沈潜」してこそ、爆発がある。そのプロセスで、実は情報も単なる知識ではなく知恵にまで昇華されていく。
著者 丸山俊一
1962年生まれ。NHK 編成局エグゼクティブ・プロデューサー 大学卒業後、NHK入局。甲府放送局、衛星放送局、制作局教養番組部ディレクター、文化・福祉番組部チーフ・プロデューサーなどを経て、現職。 早稲田大学、東京藝術大学、明治学院大学で非常勤講師を歴任。社会学、映像論など講義する。
帯 社会学者 古市 憲寿 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
まえがきにかえて | p.1 | 3分 | |
1章 「よくまとまっている」のワナーーフォーマットを疑え! | p.13 | 11分 | |
2章 仕事は「自己実現」なのか?――「働くこと」をどう捉えるか | p.33 | 8分 | |
3章 人と違ったことをやってやろう?――クリエイティブと野心 | p.47 | 6分 | |
4章 「独り悶々」の時間――壁を意識したときの思考法 | p.59 | 5分 | |
5章 企画が通らないときの「自分」の壊し方――仕事に完成形はない だから面白い | p.69 | 8分 | |
6章 ためにならないことを考えるーー「力の抜き方」を知る | p.83 | 12分 | |
7章 もっと抽象的に言ってください!? 「具体的」より使える思考法 | p.105 | 9分 | |
8章 本質はどこにある?――上司と闘う「自分」に酔う前に | p.121 | 10分 | |
9章 時間が解決してくれることもあるーー「ハマらない」ほど戦力になる | p.139 | 9分 | |
10章 意識化が「仕事の筋肉」になるーー新人時代の経験の〝深み〟とは? | p.155 | 6分 | |
11章 必ずこれのみと断定するなーーみんな同じ青を見ているの? | p.167 | 12分 | |
12章 「12歳の自分」を思い出せーー仕事の進め方と「個性」 | p.189 | 16分 | |
終 章 30年もつ仕事の方法――すべての仕事は「肯定」から始まる | p.219 | 16分 | |
あとがきにかえて | p.249 | 3分 |
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