予測不可能な経済や社会の動きを「ネットワーク理論」という行動モデルで解説する本。インターネットでつながった21世紀の社会における人々の集団行動を読み解いています。
■人は他人の行動や考えを模倣する
社会的ネットワークの中では、人は他の人たちの行動や考えを真似したり模倣したりする。動機は様々だ。人が何事かについて自分なりの意見を持ったとしても、自分よりよくわかっている人から違う意見を聞けば、自分もそれに合わせて意見を変えたりする。あるいは順応したいというだけの理由で、特定の社会的集団の行動を受け入れる人もいるかもしれない。ネットワークの力に支配されると、人はもう独自に行動しなくなり、社会的集団の構成要素として行動するようになる。模倣、つまり周りの人の行動を見て判断し、真似するようになる。
ネットワークを構成する個人の集まりは、大抵、このネットワークという特定のシステムが受けるほとんどの「ショック」に対して安定的である。しかし時々、特定のショックが劇的な効果を持つ事がある。だからネットワークは「脆弱」でもある。特定のネットワーク全体、あるいはほぼ全体にわたって個人の行動が変わる事がある。そのショックが起きる以前に、結果としてどんな影響が及ぶか予測するのは、とても難しい。
企業でも政府でも、政策を考える時は、21世紀の合理的エージェントの行動モデルを通して考える必要がある。これは、煎じ詰めれば人まねの原理に基づくモデルである。この理論はエージェントが独創的に行動し、それまでにやった事のない選択を行いうる事を認識している。このモデルの描く行動の指針は、エージェントは優先的選択の原理に従って他人の行動や意見、選択を模倣するというものだ。
ある選択肢がよりたくさんの人に選ばれれば選ばれるほど、同じ選択に直面した次のエージェントが同じ選択肢を選ぶ可能性は高くなる。ほとんど逆説的に、この特性で任意の政策がもたらす結果は、事前にはいっそう不確実になり、同時に、政策が与える影響はポジティブ・リンキングの力でより大きくなる。
著者 ポール・オームロッド
エコノミスト ケンブリッジ大学とオックスフォード大学で経済学を修めた後、『エコノミスト』誌で経済予測に携わる。業績は学界から実業界にまで及び、1982年から1992年までヘンリー予測センター所長を務めたほか、ロンドン大学、マンチェスター大学で客員教授として教鞭を執っている。 イギリス社会科学院のフェローであり、経済学への貢献に対し、ダラム大学から名誉科学博士号(DSC)を授与されている。
日経ビジネスアソシエ2015年11月号 |
THE21 2015年 11 月号 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊東洋経済 2015年 11/21号[雑誌] 北海道大学大学院教授 橋本 努 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 章 ネットワーク理論が経済学を進化させる | p.1 | 3分 | |
第1章 100年前の経済学で21世紀の社会を理解できるのか? | p.5 | 32分 | |
第2章 タバコの税率を上げたら健康被害が増えた? | p.45 | 24分 | |
第3章 サイモンとケインズが突いた「合理的経済人」の矛盾 | p.75 | 37分 | |
第4章 経済学者はなぜいまだに金融危機を防げないのか | p.121 | 29分 | |
第5章 なぜひと握りのスターだけが「幸運」を手にするのか | p.157 | 26分 | |
第6章 複雑なネットワークを読みとく3つのポイント | p.189 | 37分 | |
第7章 「人まね」、それは不確実な世界を生きぬくための最適戦略 | p.235 | 36分 | |
第8章 高失業率の町に起業家精神をもたらすことはできるのか? | p.279 | 29分 | |
第9章 ネットワーク理論で社会を豊かにすることはできるのか? | p.315 | 32分 |
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