不要になった衣料品を回収し、バイオエタノールやポリエステルにリサイクルする。
独自のリサイクル技術によって、石油を不要とする社会を目指して、事業を行っているベンチャー企業の物語。
■事業のきっかけ
2006年の中頃、「トウモロコシから、エタノールなどのバイオ燃料ができる」という新聞記事を読んで、ある事がひらめいた。「トウモロコシからバイオエタノールが作れるなら,同じ植物の綿でできた服からもバイオエタノールが作れるのではないか」
日本も世界も、繊維製品のリサイクルはほとんど進んでいない。日本国内では、衣類が年間100万トン、カーテンのような繊維製品も含めると年間約200万トンが廃棄されている。その内、2割ほどがリユース、リサイクルされるが、残り8割はごみになっている。
何かいい手はないかと、当時は、新聞や雑誌の隅々までチェックし、また異業種交流会のようなものにも時間があればあちこちに顔を出す毎日だった。そんな生活を数年は続けていた。
石油を一滴も使わずに済む社会は、必ずやってくる。なぜなら、世界で初めて、服を資源(バイオエタノールとポリエステル)に戻す技術を開発したからである。日本中の企業をつなぎ、衣類や携帯電話を広域で回収し、参加した皆がメリットを得られるビジネスモデルを既につくったからである。消費者が回収に積極的に参加したくなるブランドを生み出したからである。
技術とビジネスモデルとブランディングの3つを核に、ビジネスとしてリサイクルに取り組んでいるのが日本環境設計というベンチャーである。消費者は、いらなくなった服を小売店に持っていく。回収した小売店は、それを日本環境設計に送る。日本環境設計は、それをバイオエタノールとペット樹脂に戻す。繊維メーカーは、ペット樹脂からポリエステルの糸を引く。その繊維を使って、アパレルメーカーが服をつくる。お店に並んだ服を消費者が購入する。
この循環の「輪」の中には「捨てる」という行為もなければ、石油という「地下資源」が介在する余地もない。今、日本が出しているすべての衣類ごみやプラスチックごみを石油に戻して「地上資源」として活用できれば、それらをつくるために、新たに石油を輸入する必要はなくなる。「地上資源」を循環させる事で、ポリエステルの糸もプラスチックも、社会で使われている分量を十分に賄う事ができるからである。
著者 岩元 美智彦
1964年生まれ。日本環境設計株式会社 代表取締役社長 大学卒業後、繊維商社にて営業職としてキャリアをスタート。取引の傍らで廃棄される製品のリサイクルが日本の課題であると感じ、企業での再生繊維の開発・普及・啓発に5年間、繊維製品のリサイクルのビジネスモデル構築に7年間携わる。 2007年、日本環境設計株式会社を設立。2008年、綿繊維からバイオエタノールをつくる技術開発に成功。また2010年、衣料、繊維製品をリサイクルしたい消費者と企業を結ぶ「FUKU-FUKU プロジェクト」を開始。さらに2012年には、環境省と連携してプラスチック製品の回収実証実験である「PLA-PLUSプロジェクト」を開始。2015年現在、150の企業・団体が参加する一大インフラとなっている。
帯 良品計画 代表取締役 金井 政明 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 4分 | |
第1章 ごみを「資源」に戻す、すごい〈技術〉 | p.21 | 18分 | |
第2章 消費者と企業をつなぐ、すごい〈ビジネスモデル〉 | p.61 | 21分 | |
第3章 誰もが参加したくなる、すごい〈ブランディング〉 | p.107 | 23分 | |
第4章 お金を回しつづける、すごい〈マネタイズ〉 | p.157 | 12分 | |
第5章 小さくても戦える、すごい〈アイデア〉 | p.183 | 15分 | |
終 章 「地上資源」がめぐれば世界は回る | p.215 | 3分 |