様々な要素を結び付けてデザインする
優れたデザインは、よりシンプルで好ましい方法で問題を解決する。優れたデザインは偶然の産物ではない。意図的に生み出される必要がある。
デザインは、目には見えないものとどのように関連しているかを理解しなければならない。目に見える要素と見えない要素がどのように結びつくかを考えるためには、それを「システム」として考える事だ。システムとは、1つの事を達成するために結びついた要素や行動をいう。目に見えるもの(製品、広報活動、従業員など)と、目に見えないもの(パートナーシップ、プロセス、社風など)を結び付ける事によって、発展を促す事が目標になる。
「いろはす」の事例
コカ・コーラ社のチームは、伸び悩むボトル入り飲料水事業をいかにして立て直したのか。水を売る事は、市場シェアを確保するために、製品の形を変える事も、新しい機能を加える事もできない。チームは、広告だけでなくウェブサイトやボトルデザインの刷新が必要だろうと考えていた。価格戦略や顧客関係管理、サプライチェーンの見直しも必要になる。
彼らは大事な事に気付いた。日本ではリサイクルは「推奨」されるだけではなく、生活の一部になっていて、プラスチックごみの7割以上がリサイクルされている。飲料水ブランド「ミナクア」はこの点を踏まえていないのは明らかだった。チームはもう1つのデータにも着目した。東京の住宅価格は高く、一戸の平均サイズも小さい。空のボトルは貴重な空間を奪ってしまう。
2009年、日本コカ・コーラ社は全く新しい飲料水ブランド「いろはす」を売り出した。新しいパッケージの重さはわずか12グラムで、他のボトルよりも40%軽い。製造過程でプラスチックの使用を減らし、コストを削減すると同時に二酸化炭素排出量を減らす事で地球環境への悪影響を抑えた。さらに、ボトルは軽く、片手で簡単に押しつぶせるため、リサイクル用の回収容器がすぐに一杯になる事もない。つまり、システム全体の様々な要素を結び付けたのである。広告キャンペーンで「おいしく飲み、しぼって、リサイクルする」というメッセージは瞬く間に広まった。
WHYから始めよ
優れたリーダーや企業は「WHY(なぜ)」から始める。彼らが最初に焦点を当てるのは、目的であり、「何を、どのようにやるのか」ではない。ほとんどの企業は、何をデザインするかに焦点を当てる。一方、デザインから最大限に価値を引き出す企業は「WHY」から出発し、その目的に応じて、デザインを用いるプロセス「HOW」を明確にする。
デザインについて総合的に考えること、即ち「WHY」「HOW」「WHAT」を考える事によって、誰もが競争優位や成長をもたらせる。