Zip2、ペイパルを起業して成功した後、スペースX、テスラモーターズ、ソーラーシティと、宇宙、電気自動車、太陽光発電事業を手がける起業家イーロン・マスクの自伝。ジョブズを超える起業家として注目される人物のことがわかる1冊。
■少年時代
イーロン・マスクは1971年に南アフリカ北東部の首都プレトリアに生まれた。彼は子供時代に海外旅行が楽しめる裕福な家庭に育ったが、その頃からアパルトヘイト政策に対する自国に向けられた外部の目を意識するようになった。やがて、彼の視線は米国へ向かうようになる。米国をチャンスの地と捉え「人類救済」という夢の実現に一番近い場所と考えた。
マスクはとにかく好奇心旺盛で活発な子だった。だが、時々ボーッとなって心ここにあらずの状態に陥った。この白昼夢状態は本人にとっては、外界と断絶して1つの事に全神経を集中させる術として、至福の瞬間だった。少年時代のマスクの性格で印象的なのが、異常とも言える読書欲だ。1日10時間、本にかじりついている事も珍しくなく、いつも片手に本を持っていた。
高校時代はビデオゲームのプログラムを作って、大人を驚かせる事もあった。驚異的な記憶力の持ち主だったが、学校で与えられた勉強にはまるで興味がなかったため、学校の成績はあまり良くなかった。
大学卒業後の1995年、イーロン・マスクはドットコム・バブルに乗っかる形でZip2と呼ばれる会社を起こした。生まれた初めての起業だったが、これが大当たりだった。その後、1999年にコンパックに3億700万ドルで売却する。この取引で2200万ドルを手にしたマスクは、ほぼ全額を次の起業につぎ込んだ。後のペイパルである。2002年、イーベイが同社を15億ドルで買収した事で、ペイパルの筆頭株主であるマスクはとんでもない資産を手にする。
だが、マスクはシリコンバレーにこもる事なく、ロサンゼルスに向かう。まずは落ち着き、次のチャンスの到来を待つというのが昔ながらのセオリーだが、彼にそんな常識は通じない。スペースXに1億ドル、テスラに7000万ドル、太陽光発電のソーラーシティに3000万ドルを投じた。3社は、航空、自動車、太陽光発電の産業で過去の常識にとらわれず、大胆な発想で開発する気風に溢れている。
スペースXでは、ロッキード・マーティンやボーイングといった軍産複合体の巨人と戦っている。スペースXは、搭載物を宇宙に運んだ後、地上の発射台に正確に帰還する再使用型ロケットの実験を続けている。この技術を完成させれば、あらゆるライバルに致命的な一撃を与える事になり、ロケット業界の有力企業が廃業に追い込まれる。同時に、宇宙に貨物や人類を送り込む事業に関して米国が世界のトップに君臨する事になる。
テスラモーターズでマスクは車の生産・販売方法自体に新風を吹き込み、同時に世界的な燃料販売網を増強している。テスラが目指したのは、誰もが欲しがっている「100%の電気自動車」である。むろん、技術の限界に挑まなければ実現しない。さらにテスラが展開する充電ステーションは、米国や欧州、アジアの主要ハイウェイ沿いに次々に誕生している。30分も充電すれば何百kmも走る事ができる。テスラオーナーは、燃料補給に金を払う必要がない。
ソーラーシティは、太陽光発電装置の設置や販売を手がける会社だ。同社は従来の電力会社が太刀打ちできないほど安価に電力を供給し、自力で大手電力会社に成長した。クリーンテクノロジー系企業の経営が次々に行き詰まっている中、マスクは世界屈指のクリーンテクノロジー企業を2社も成功に導いている。そして、マスクは100億ドル相当の資産を持つ大富豪になった。マスクのおかげで米国は世界よりも10年早く未来の扉を開ける可能性がある。
著者 アシュリー・バンス
作家・ライター テクノロジー分野の第一線で活躍する。『ニューヨークタイムズ』紙でシリコンバレーやテクノロジーの取材を数年にわたって手がけたのち、週刊ビジネス誌『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』に活動の場を移し、サイバースパイ活動からDNAシークエンシング、宇宙探査に至るまで幅広い分野で主に特集記事を担当している。
帯 ライブドア元代表取締役 堀江 貴文 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
WEDGE |
週刊ダイヤモンド 2016年 1/16 号 [雑誌] (お宝銘柄を探せ! 知られざる成長企業215社) 天狼院書店店主 三浦 崇典 |
エコノミスト 2016年 3/1 号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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1イーロン・マスクの世界 「次の」スティーブ・ジョブズ | p.7 | 18分 | |
2 少年時代 祖国・南アフリカの甘くて苦い記憶 | p.29 | 18分 | |
3 新大陸へ 壮大な冒険の始まり | p.51 | 10分 | |
4 初めての起業 成功の第一歩を踏み出すまで | p.63 | 15分 | |
5 ペイパル・マフィア 栄光と挫折とビッグマネー | p.82 | 20分 | |
6 宇宙を目指そう ロケット事業に乗り出すまで | p.107 | 34分 | |
7 100パーセントの電気自動車 テスラ・モーターズという革命 | p.149 | 26分 | |
8 苦悩の時代 生き残りをかけた闘い | p.181 | 17分 | |
9 軌道に乗せる 火星移住まで夢は終わらない | p.202 | 18分 | |
10 リベンジ 21世紀の自動車を世に出す | p.224 | 32分 | |
11 次なる野望 イーロン・マスクの「統一場理論」 | p.264 | 31分 | |
エピローグ | p.302 | 2分 |