安値競争に陥っては儲からない。「良いものを高く売る」ことが大切であると説き、値決めの基本的な考え方を紹介する入門書。
■利益は売上ではなく値決めで決まる
値下げで売上が増えても、利益が減ってしまう事がある。どんな商売でも、自らの商品・サービスの「1個の儲け」を出す事から始まる。「1個の儲け」は、販売単価から仕入単価を引いた金額である。これをどれだけ積み重ねられたかで全体の儲けが決まる。
1個の儲け × 販売数量 = 全体の儲け
(販売単価 ー 仕入単価) × 販売数量 = 全体の儲け
良い売上アップでは「1個の儲け」が増えて厚くなり、悪い売上アップでは「1個の儲け」が減って薄くなる。この「1個の儲け」の積み重ねが全体の利益となり、全体の利益が固定費を超えれば、その分だけ利益が出る。
値下げは、この大切な「1個の儲け」を減らす危険な行為である。値下げによって「1個の儲け」が薄くなると、売上が増えても利益が減る。売上ではなく、値決めが利益の大きさを決めるのである。
値下げで売上が増えても、利益が減ってしまう事がある。値下げを成功させ、利益を増やすための成功条件は2つ。
①変動費の比率が低いこと(固定費体質であること)
②値下げによって販売数量が大幅に増加すること
どんな商売でも「値下げ」する事自体は難しくない。値下げすれば、安さに釣られてやってくるお客さんによって目先の「売上」は増える。しかし、売上が増えても利益が増えるとは限らない。
値下げで薄くなった「1個の儲け」をどれだけ積み重ねる事ができるか。これが難しい。レッドドッグがひしめく環境では、世界中の「パクリ・安値」ライバル達が安値競争をしかけてくる。だからほとんどの値下げは失敗に終わる。
商売の目的は、売上を増やす事ではない。「1個の儲け」を積み重ね、「全体の儲け」を大きくする事である。
著者 田中 靖浩
1963年生まれ。田中公認会計士事務所 所長 東京都立産業技術大学院大学 客員教授 大学卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。中小企業向け経営コンサルティング、経営・会計セミナー講師、執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。。
週刊ダイヤモンド 2015年 8/29 号 [雑誌] 八重洲ブックセンター八重洲本店 販売課リーダー 鈴木 寛之 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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イントロダクション | p.4 | 4分 | |
第1章 売上重視が、会社を不幸にする犯人だった! | p.17 | 14分 | |
第2章 ドッグ(DOG)ビジネスは「無料」に向かう | p.43 | 19分 | |
第3章 値下げが成功する場合、失敗する場合 | p.77 | 13分 | |
第4章 そろそろ「値決めの哲学」を持とうじゃないか! | p.101 | 18分 | |
第5章 顧客満足「高」価格をつくる「まぜプラ」 | p.133 | 18分 | |
第6章 顧客に心地良いサプライズをつくる「ここプラ」 | p.165 | 14分 | |
第7章 トップセールスに学ぶ、比べさせて売る「くらプラ」 | p.191 | 13分 | |
第8章 顧客の困りごと、悩み、不満を和らげて2.5倍売る「やわプラ」 | p.215 | 16分 | |
エピローグ | p.244 | 1分 |