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2015/09/21更新

IQは金で買えるのか――世界遺伝子研究最前線

206分

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天才遺伝子を探すプロジェクト

米国では戦後になっても「知能が低い」「精神病」などの理由で不妊手術を強要する優生政策が取られ、その傷跡が今でも残っている。優秀な遺伝子を選別しようとする試みは民間レベルでも存在した。米国では1980年代から90年代にかけて「ノーベル賞受賞者の精子バンク」が存在した。

米国では有償の精子バンクがいくつも存在する。そこでは現在、容姿や学歴はもちろん、知能指数(IQ)や病歴からドナーを選ぶ事が当り前に行われている。そこにあるのは極めて個人的な選択であって、誰かにとやかく言われる筋合いはないとの考え方が根底にある。

現在、世界中から「天才」2000人分のDNAを集め、知能を決める遺伝子の働きを解明しようと、中国のBGI社はプロジェクトを進めている。BGI社は、シーケンサーと呼ばれるDNAの塩基配列を解析する最新の装置を多数揃え、欧米の科学誌に数多くの論文を発表している。

人の知能に遺伝が一定の割合で関係している事は双子を追跡した調査で確かめられている。海外ではDNAが全く同じ一卵性双生児が同じ環境で育った場合、2人の知能指数は相関関係が0.8を超えるような強い相関を示したという報告がある。

もし知能をつかさどる遺伝子がわかったとするとどうなるか。着床前診断の技術を使えば、対外受精でつくった受精卵のDNAを調べ、選んだ1個を着床させる事ができる。この技術を使って、両親が「最も賢くなる受精卵」を選べば、生まれてくる子供の知能指数(IQ)は平均で1代5〜15ポイント高まるとしている。

一方、遺伝とはいっても、知能には少なくとも数百以上、あるいは数千単位の遺伝子の働きが複雑に絡み合っていると考えられている。知能に関係している可能性のある遺伝子の候補はいくつか見つかっているが、決定的なものはまだわかっていない。

プロジェクトの念頭にあるのは、知能にかかわる数千ヶ所のDNA配列がどのような組み合わせになると知能が高くなるのか、統計的な方法を用いて予測する手法だ。集まった2000人の「天才」のゲノムデータを「天才」ではない数万人単位のゲノムと比べる。個々の遺伝子の働きというよりは、塩基配列全体の違いに法則性のようなものがないかを調べる。一度に何ヶ所ものDNA配列を読み込める「DNAチップ」のようなデバイスなら既に存在する。こうしたデバイスを使って受精卵の遺伝情報を調べ、確率的に最も賢くなりそうな1個を選ぶという手法が成立しうる。

今後、天才赤ちゃんづくりは中国に限った問題ではなくなる。こうした生殖ビジネスが世界中どこで始まってもおかしくない。