感情が成果に大きな影響を及ぼす
人間は戦略によって動くのではない。合理性だけで動かない。人間を行動に導く上で重要なファクターは感情である。しかし、感情は多様化、複雑化している。そこに、感情への働きかけ方の難しさ、リーダーシップの発揮の仕方の難しさがある。
かつては、高い給与やポストを誰もが求めていた。感情を動かすにはそこに働きかけるのが最も有効だった。金銭報酬、地位報酬によって、人の感情は動き、行動につながった。しかし、今は給与やポストだけでは感情は動かない。その仕事が自分にとってやりがいがあるか、顧客を喜ばせる事ができるか、社会の役に立つのか。仕事に意味を求めている。その意味に応える、意味報酬があるかどうかが重要である。
但し、意味報酬の中身は1人1人で違う。そのため、リーダーにはそれぞれが求めている意味報酬を見極め、それに応えていく事が必要になる。
感情を変えるステップ
人の感情や気持ちを変えるには、正しい手順を踏む事である。
①解凍(相互不信を解く、期待感を醸成する)
理解や共感のためには、相手の話を聞く事が前提になる。
②変化(共感を引き出す、納得感を醸成する)
現状維持バイアスが変化の妨げになる。この過去慣性を解くためには、現状の危機感を自分で認識する、そして、その危機から脱するための方法を自分で考える事が重要である。
③再凍結(仕組み化する、変化を実感させる)
リーダーと現場の視点の違いに目を向ける
問題を抱えた組織の共通点は「問題の原因となっている誰かを突き止めようとする」こと。つまり犯人捜しを行っている事である。しかし、犯人を特定してみたところで、組織の問題は解決しない。
トップやリーダーと現場の人達との思いの差は、立場や役割の違いから生まれる。トップやリーダーは、中長期的な視点で現状からゴールまでを捉え、戦略を決定する。しかし、ビジネスは生き物だから、現状は常に変わる可能性があり、戦略にも修正や練り直しが必要になる。それを行うと、現場からは「コロコロ変わる」と見える。一方、現場は、今日何をやるか、明日何をやるかという事を考えるため、視点は短期的なものになる。そこに戦略の変更が伝えられても、すぐには対応できない。リーダーにとって、そんな現場が「柔軟性がない」「スピード感が足りない」と映る。
トップやリーダーと現場との対立関係という組織の問題は、ここにポイントがある。「誰が悪いか?」ではなく、立場や役割の違いに目を向けること。すると問題解決の糸口が見つかる。それぞれの立場と役割に目を向ければ、双方に納得感が生まれる。