終身雇用が崩壊した今、会社と社員の雇用関係には新しいモデルが必要である。シリコンバレーで実践されている、新しい雇用形態のあり方を、リンクトイン創業者の著者が紹介している一冊。
■アライアンス
企業と社員がきちんとコミットし合えるような、新しいタイプの信頼関係を生み出す事は可能である。雇用を「取引」ではなく「アライアンス」として捉える。自立したプレーヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネージャーと社員がお互いを信頼して相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。アライアンスの関係は、雇用主と社員が「どのような価値を相手にもたらすか」に基づいてつくられる。
■仕事の内容と期間を決める
長期的関係のために定期的に仕事を変える。これが「コミットメント期間」の枠組みの真髄である。これは「ミッションを期限内に成し遂げる事に専念し、そこに個人の信用をかけている」という考え方だ。働き方を「いくつものコミットメント期間の積み重ね」という形に位置づけ直すと、起業家タイプの人材を惹き付け、自社で働き続けようと思ってもらいやすくなる。魅力的なコミットメント期間を設計できれば「個人としてのブランド力」を高める道筋を示す事になる。
■新しい雇用モデルが必要
今日、真剣に雇用を保証しようなどという企業はほとんど存在しない。その上、どれだけの期間あなたに勤めて欲しいのか、という点については曖昧な言い方しかしない。会社の本音は「優れた」社員だけに残って欲しいのだ。この「曖昧さ」こそが雇用主と社員の信頼関係を壊している。このような企業は社員側に忠誠を求めながら、会社側は何も約束しないという。これに対して、雇われる側の多くは、賭ける先を分散してリスクヘッジする事で応えてきた。転職のチャンスがあればすぐに飛びつく。
上司であるマネージャーは、両者の間で板挟みになってしまっている。なんとかして大事なプロジェクトの完了まで離職者を出さない事ばかり心配している。部下の将来を見据えて、いかに成長させるかを考えるマネジャーなどいない。雇用主の会社、上司となるマネジャー、雇用される社員。三者とも新たな関係構築の枠組みを必要としている。
企業は組織の至るところに起業家タイプの人材が必要だ。アライアンスの原則は、すべての雇用関係は本質的に双方向で、社員の得るメリットと会社の得るメリットを互いに明確にするという事である。
著者 リード・ホフマン
1967年生まれ。リンクトイン 共同創業者兼会長 世界的に著名な起業家にして投資家。ペイパルの創業時から取締役会に名前を連ね、上級副社長も務めた。現在はシリコンバレーの主力ベンチャー・キャピタル、グレイロック・パートナーズの共同経営者を兼ねる。フェイスブックやジンガなど、100 社を超えるテクノロジー企業に早い段階から投資を行っている。
著者 ベン・カスノーカ起業家 数々の受賞歴を持つ起業家にして著述家でもある。『ニューズウィーク』に寄稿するほか、CNN、CBS の『ジ・アーリーショー』、CNBC などのテレビ番組にも出演している。リンクトインで会長秘書を務めた経験もある。 『ビジネスウィーク』から「アメリカ最高の若手起業家」のひとりに選ばれた。
著者 クリス・イェPBworks バイスプレジデント Wasabi Ventures 共同創業者、ゼネラル・パートナー 起業家、著作家、メンター。
TOPPOINT |
日本経済新聞 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 01 月号 [雑誌] (意思決定の罠) |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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1章 ネットワーク時代の新しい雇用 | p.19 | 13分 | |
2章 コミットメント期間を設定しよう | p.42 | 22分 | |
3章 コミットメント期間で大切なもの | p.79 | 11分 | |
4章 変革型コミットメント期間を導入する | p.98 | 12分 | |
5章 社員にネットワーク情報収集力を求める | p.118 | 6分 | |
6章 ネットワーク情報収集力を活かすには | p.129 | 10分 | |
7章 会社は「卒業生」ネットワークをつくろう | p.147 | 10分 | |
8章 「卒業生」ネットワークを活かすには | p.165 | 6分 | |
おわりに | p.175 | 2分 |
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