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2015/08/24更新

黒霧島物語 宮崎の弱小蔵元が焼酎王者になるまで

  • 馬場 燃
  • 発刊:2015年6月
  • 総ページ数:256P

184分

2P

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焼酎業界No1酒造メーカーの経営戦略

芋焼酎「黒霧島」によって、全国トップの酒蔵になった霧島酒造の物語。宮崎県の弱小蔵元であった霧島酒造がなぜ全国トップになれたのか、その経営戦略と歴史が紹介されている本。


■デフレ時代に売上7倍
日本のどこの居酒屋でも飲めるようになった芋焼酎「黒霧島」は、1916年から宮崎県都城市で芋焼酎の製造を始め、2016年に創業100周年を迎える霧島酒造が生産している。黒霧島は1998年に宮崎県で限定販売して以降、急速に販売を増やし、現在は全国に浸透した。

霧島酒造は、1990年代後半までは、宮崎県のマイナーな中小蔵元の1つでしかなかった。九州で約8割を生産する本格焼酎の業界は、各地域に酒蔵が林立し、独自の風味を開発してきた。細分化の進んだ群雄割拠の様相を呈し、15年前までは全国区の知名度を誇るのは、大分県の三和酒類が造る麦焼酎「いいちこ」くらいだった。

その状況を一変させたのが黒霧島だ。霧島酒造は2012年、売上高で三和酒類を追い抜き、焼酎業界で日本一に躍り出た。1998年度に81億9300万円だった売上高は、2013年度に565億7600万円と約7倍に跳ね上がった。その裏には、黒霧島の開発から販売、生産革新といった独自の戦略があった。

超短要約

まずは薩摩酒造の「さつま白波」が第1次焼酎ブームを起こし、日本全国で焼酎を飲む「下地」が初めて生まれた。それまでは九州地域の酒蔵が、地元の市民に提供するローカル酒だった。

その土台があった事で、芋焼酎ほど個性が強くない麦焼酎が成長した。三和酒類の「いいちこ」が、アクのない都会向け商品の開発に成功し、後発メーカーが古い酒蔵を凌駕する形で伸びた。日本で焼酎市場が大衆化した。

こうした「入門編」の商品を経て、焼酎の風味をある程度知った消費者が次に受け入れたのが「中級編」となる霧島酒造の「黒霧島」だった。

変化の1つは、流通網の変革だった。昔は地域ごとに小さな酒屋があった。そこで晩酌の友を購入した。現在はコンビニからスーパーまで、消費者はどこでもお酒が買える。酒造メーカーと消費者を結ぶ中間の流通網が発達し、酒類の販売は完全にシステム化された。すると、売れる商品と売れない商品の選別が加速した。流通や売り手は在庫になりやすい商品を嫌う。

黒霧島は焼酎ブームの終焉後も消費者に求められ、引き合いが途絶えない勝ち組の商品といえる。流通や売り手は、構築されたシステムの中で、黒霧島をもっと売ろうと自然に考える。その方が他の商品を扱うよりも儲かる。

但し、焼酎業界全体で見ると、黒霧島に続く有力ブランドが薩摩焼酎から出てこなければ、大都市圏での需要を喚起しにくい側面がある。

著者 馬場 燃

日本経済新聞社経済部記者 大学卒業後、日本経済新聞社入社。産業部、鹿児島支局、経済部を経て、2012年日経BP社に出向。2015年4月から現職。 新聞社では鹿児島支局時代に焼酎ブームを取材し、数十の蔵元を回る。東京本社では内閣府、日銀、経済産業省、財界、金融機関などを担当。出向先の『日経ビジネス』では、ミクロ、マクロ両面の記事を多数執筆。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
序 章 デフレ時、驚異の売上高7倍達成 p.11 6分
第1章 都城、そして江夏家の歴史 p.21 7分
第2章 2代目の徹底的なこだわり p.33 15分
第3章 のしかかる「六重苦」 p.59 10分
第4章 「黒霧島」の誕生 p.77 9分
第5章 決戦、福岡 p.93 12分
第6章 芋不足という大試練 p.113 13分
第7章 大型投資の決断 p.135 8分
第8章 東京進出と、悲願の焼酎業界トップの座 p.149 12分
第9章 若者たちが担う「黒霧島」 p.169 12分
第10章 1000億円企業への道筋 p.189 16分
第11章 「黒霧島」とともに走る都城市 p.217 11分

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