高齢化、過疎化により、空き寺が増え、寺院の衰退が進んでいる。仏教界が今置かれている状況を調べ、お寺の存続意義を問いかける一冊です。
■空き寺が急増している
現在、全国に約77000の寺院がある。その内住職がいない無住寺院は約20000カ寺に達している。さらに宗教活動を停止した不活動寺院は2000カ寺以上に上ると推定される。無住寺院とはつまり空き寺の事であり、放置すれば伽藍の崩壊や、犯罪を誘引するリスクがある。
しかし、多くの宗門は無住寺院や不活動寺院の実態を把握しきれていない。ましてや、この状況から脱するための対策には乗り出せていない。末端の各寺院はそれぞれが宗教法人格を有している以上、宗門本部がカネを投入したり、整理・統合を進める事が難しい。寺を存続させるかどうかは住職の判断に委ねられている。
この無住寺院が近年、急増している。「後継者の不在」が原因だ。その背景には少子高齢化、都市と地方の格差問題など、近年の社会構造の変化が横たわっている。都市部の財力のある寺院は若い僧侶達にとって魅力的で、後継に困る事は少ない。空き寺になっていくのは、多くは僻地にある檀家数の少ない寺だ。そうした僻地の寺に好んで入る僧侶は、ほとんどいないのが実情で、現在の住職が亡くなれば、自動的に無住寺院になってしまう。
全国にあるおよそ77000カ寺の内住職がおらず後継者も見つからない「無住寺院」は約20000カ寺存在すると言われる。さらに既に宗教活動を停止した「不活動寺院」は、2000カ寺以上に上る。
こうした寺院は、別の寺の住職が兼務しながら、辛うじて存続させている状況だ。無住寺院や不活動寺院の増加は特に僻地で顕著だが、近年は都心部にも及んできている。いくら都心の真ん中に寺があっても、後継者がいなければ寺は途絶えてしまうからだ。また、少子化に伴う檀家の減少は、寺院の存続に直結する問題だ。あるいは寺院の修繕資金が集まらず、活動を維持できなくなる危険性も、地方都市に限った事ではない。
将来的に、全国77000カ寺の内3〜4割が消滅する可能性がある。「失われた20年」で寺院を取り巻く状況は一変した。地方から都市への人口の流出、住職の高齢化と後継者不在、檀家の高齢化、布施の「見える化」、葬儀・埋葬の簡素化など、社会構造の変化に伴う問題が次々に浮上。全国では空き寺が急増し、寺院の整理・統合の時代を迎えようとしている。
著者 鵜飼 秀徳
1974年生まれ。日経ビジネス記者 浄土宗・正覚寺 副住職 大学卒業後、報知新聞社に入社。事件・政治担当記者を経て、日経ホーム出版社(現日経BP社)に中途入社。月刊誌「日経おとなのOFF」など多数のライフスタイル系雑誌を経験。2012年から週刊経済誌「日経ビジネス」記者。 これまで社会、政治、経済、宗教、文化など幅広い取材分野の経験を生かし、企画型の記事を多数執筆。
日本経済新聞 |
週刊ダイヤモンド 2015年6/6号 [雑誌] 作家 佐藤 優 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.5 | 3分 | |
一章 地方から寺と墓が消える | p.11 | 73分 | |
二章 住職たちの挑戦 | p.119 | 34分 | |
三章 宗教崩壊の歴史を振り返る | p.169 | 48分 | |
四章 仏教教団の調査報告 | p.239 | 18分 | |
おわりに | p.266 | 3分 |
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