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2015/06/23更新

三越伊勢丹 ブランド力の神髄 (PHP新書)

  • 大西 洋
  • 発刊:2015年4月
  • 総ページ数:235P

163分

2P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

対象読者:

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在庫リスクをとり、利益率を高める

仕入構造改革は、三越伊勢丹が2011年から始めた取り組みである。衰退しつつある百貨店を立て直すには、売上は大きく伸びなくても営業利益率が向上する仕組みをつくるしか方法はない。つまり、売上が伸びないならば、仕入価格を下げるしかない。そこで、百貨店サイドが販売リスクを取る事で、仕入れ価格を下げる事にした。これまでは売れ残った商品は取引先に返品していたが、在庫リスクを負う事にした。

仕入構造改革を成功させるには、商品を売り切る事が欠かせない。最低でも85%は売り切る事が大前提となる。そこで大事になるのが販売力である。その中心にあるのが「現場」である。

現場力を高める

百貨店業界をはじめとする小売業界は、経済環境の動向だけで自らの業績を語りがちである。しかし、経済環境に左右されないように取り組んでいかなければ、百貨店が生き残っていく事はできない。むしろ、三越伊勢丹は、厳しい環境にさらされた方が強み(ブランド力)を発揮できるのではないか。そのブランド力の源泉が「現場力」である。

「現場力」は、店頭にしかない。お客様と直接ふれ合い、百貨店で最も現場力を発揮しているのは「スタイリスト(販売員)」である。そこで人事制度の改定(販売実績に応じた報酬を支給する制度の導入)に着手した。現場力は、店頭でお客様に向き合うスタイリスト達のモチベーションにかかっているからである。三越伊勢丹には12000人の社員がいるが、彼ら1人1人のモチベーションがほんの少しでも上がれば、売上はすぐに2〜3%上がる。店頭に並べる商品や、おもてなし精神にあふれた販売サービスの精度アップも、すべて人がやる事である。

サービスの低下は、働く人の条件を高める事で回復させる。そのために、三越伊勢丹は営業時間を短縮し、定休日を設け、休む時には休むという環境を作る。営業時間が長いと「シフト制」の働き方を取り入れなければならない。それでは、お客様にとって、お目当てのスタイリストがその時々でいなかったりして、来店の動機が削がれる可能性がある。そこで三越伊勢丹では「一直」と呼ばれる開店から閉店まですべてのスタイリストが店頭に立つ働き方にする。そうする事で、引き継ぎのコミュニケーションが不要となり、その分を接客に充てる事ができる。時間を短縮する事で、よりサービスの質が高くなり、売上も上がり、生産性も高まる。

三越伊勢丹の課題は、社員と取引先のすべてが同じようなレベルで感じ、おもてなしの質を高めていく事である。それは「現場力」であり、その現場力をつくるのは人にほかならない。