ポテトチップスでは勝てない
カルビーは、1960年代後半から東南アジアに『かっぱえびせん』の輸出を始め、1970年にはカルビーアメリカを設立、その後タイや香港にも進出した。でも、ブローカーの依頼に応じて売っていただけで、末端の戦略など考えていなかった。そのカルビーは2010年から本気で海外に乗り出した。
カルビーは、ポテトチップスでは海外で勝てないとする。ポテトチップスを安定供給するには、生のジャガイモからのサプライチェーンを確立する必要がある。ポテトチップスビジネスは、いいジャガイモを必要量調達できるかどうかで勝負は決まるが、世界のジャガイモはフリトレーががっちり押さえている。
そこで選んだ商材が、アメリカではえんどう豆の菓子「ハーベストスナップス」だ。アジアを除く海外では、甘く煮た豆は嫌われるが、ただの豆はヘルシーだという理由で好まれる。海外で急増する日本食レストランでは、もはや枝豆は定番メニューだ。このカルビーの「ハーベストスナップス」はアメリカの店頭では「健康に良い食品」というカテゴリーで販売されている。日本のお菓子はおいしいけれど、おいしくて安いだけでは売れない。必要なのは戦略である。
現地に合わせたブランドを確立する
日本オリジナルのチョコレート菓子は無数にあるが、グローバルブランドとしての道を歩んでいるのが、江崎グリコの『ポッキー』だ。全世界の販売個数は年間5億箱、売上金額は4億ドル。その内2億箱を海外30ヵ国で売上げている。
江崎グリコの海外進出はタイから始まった。1970年にタイグリコを設立し「ポッキー」「プリッツ」の現地生産をスタート。ここで作られたチョコレート菓子は、シンガポールやマレーシアなど近隣諸国への輸出されている。
「ポッキー」の特長は、手で持つところがあり、手が汚れないところ。食べながらおしゃべりもできる。「ながら食べ」が可能なお菓子は他にはない。フランスでは「ポッキー」が「ミカド」として流通している。名称を「ミカド」に変更したのは、向こうで人気のある『ミカド』というゲームに使う竹の棒が「ポッキー」の形によく似ているためだ。ブランド・アイデンティティーは、アジアの「ポッキー」が元気ハツラツ、明るくティーンエイジャーだとすれば、「ミカド」は完全に大人。味も「ポッキー」より濃厚だ。フランスは成熟しており、日本とは感覚が違う。「ポッキー」は日本とは違う文化圏で育ち、異なる表情、しぐさ、色っぽさを備えるに至った。