「ポッキー」「ハイチュウ」「カラムーチョ」など、海外でも人気のある日本のお菓子の事例から、海外ではどのように商品展開すればいいのかを紹介している一冊。
■日本のお菓子には可能性がある
日本のお菓子は世界中で販売されている。台湾のコンビニなどは、日本のスナック菓子で席巻されているといっても過言ではない。香港やタイのスーパーでも、日本のお菓子の取扱いは年々、確実に増えている。お菓子ほど日本の製造業の良さが凝縮された産業はない。小さな商品だが、可能性は大きい。
お菓子メーカーの多くは、輸出について数十年の歴史を持っているが、実態は輸出業者任せ。国内市場が伸び盛りだったため、海外市場はおまけのような存在だった。いざ、海外市場に本格的に進出しようとしてもしかるべき人材が見当たらないというのは当然である。
オリジナリティの高い商品、ターゲットに届きやすい流通チャネルの開拓、現地に最適化した味や価格。海外で勝負するにはこれらは不可欠な前提条件となる。そして、もう1つ重要なのが人材である。ガラパゴス的な商品を海外に売っていくには、海外市場への最適化を図る事のできる非ガラパゴスな人材が求められる。
■海外での人気を不動のものにするマーケティング
「オレオ」や「キットカット」「m&m's」といった世界各地で人気を集めるグローバルなお菓子と肩を並べるブランドが日本から誕生するとしたら、その1つは森永製菓の『ハイチュウ』だろう。
アメリカでは、2009年をピークにガムの売上が落ち、2013年までの過去4年間で11%減となった。改良を重ねてもフレーバーがすぐに消えてしまう事や、噛んだ後に捨てなければならない不便さが敬遠されたのだ。その一方で、売上不振に陥ったガムを尻目に伸びているのがキャンディーやタブレット菓子。同じ期間で売上は10%増となっている。この売上逆転劇の一端を担っているのが「ハイチュウ」でだろう。
「ハイチュウ」の快進撃は、ボストン・レッドソックスの田澤純一投手に端を発した。試合のたびにブルペンにテーピング用のテープや眠気覚ましの目薬、ガムなどのお菓子を入れたブルペンバッグを持参する「おやつ」係を勤めていた田澤投手が2009年、いつもお菓子の中に「ハイチュウ」を詰め、選手に配ったところから大好評を博した。その後、ボストン・レッドソックスと米国森永とのスポンサー契約が実現。「ハイチュウ」の味や食感は、選手だけでなく、ファンの間にも浸透した。人気チームの公式スポンサーであるという事実は、流通網の拡大に威力を発揮し、取扱店も急増している。
その後「ハイチュウ」は、ボストン・レッドソックスに加えて、シカゴ・カブス、ミネソタ・ツインズとも契約を結び、さらにはNBAのニューヨーク・ニックスともスポンサー契約を締結している。
森永製菓は「ミルクキャラメル」「チョコボール」「小枝」「マリー」「エンゼルパイ」「おっとっと」などたくさんある人気商品の中でも、「ハイチュウ」を海外向け戦略商品として選んでいる。「ハイチュウ」は技術的な価値が高い。キャンディーは競合が多い市場だが、「ハイチュウ」のテクスチャーはどこも出せない。誕生から40年経っているが、この食感と同じものはない唯一無二の商品である。海外進出には模倣されない技術が絶対不可欠である。
そして、海外で売上を伸ばすためのアプローチとしては3つの要素が挙げられる。
①誰でも手に届く価格にする
②現地の味に合わせる
③いろいろな形態(1個包装、ファミリータイプなど)を用意して、手に取りやすいようにする
但し,ブランドのコンセプトやロゴデザインのトーンアンドマナーは世界中で統一し、その上で味は現地化を徹底して、形態も含めて細分化していく。それが流通の開拓とうまくマッチした時に、お客様にとって、欲しいものが欲しい時に欲しい値段で常に揃うという状態になる。
著者 三田村 蕗子
ジャーナリスト 大学卒業後、マーケティング会社などを経て、現在フリーのジャーナリスト。 流通業を中心に、ビジネス全般に関するテーマを追いかける。
日経トップリーダー |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊ダイヤモンド 2015年 4/25 号 [雑誌] 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
日本経済新聞 |
PRESIDENT (プレジデント) 2015年 6/15 号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ | p.1 | 5分 | |
第1章 看板商品でも太刀打ちできない?!―戦略ありきの技術力 | p.19 | 20分 | |
第2章 唯一無二の食感でメジャーデビュー―模倣されない技術でマーケットに直球勝負 | p.53 | 16分 | |
第3章 おもねらず、堂々とプレゼンスを示す―独特の形状と風味を「個性」に | p.81 | 15分 | |
第4章 世界ナンバーワンの黒子となる米菓メーカー―卓越した技術と指導で、名より実を取る | p.107 | 9分 | |
第5章 味のローカライズで米菓を世界のお菓子へ―健康志向を追い風に躍進を図る | p.123 | 10分 | |
第6章 古参商品の再ブレイクで世界展開―発想の転換で廃番・衰退商品を再生復活 | p.141 | 10分 | |
第7章 「DORAYAKI」が世界共通語となる日―ターゲットの絞り込みで、弱みを強みに変える | p.159 | 12分 | |
第8章 五感訴求型販売スタイルとフランチャイズ方式で大量出店―「いつでもできたて」は世界の家庭の人気者 | p.179 | 6分 | |
第9章 「おもてなし」のパッケージ戦略で活路を見いだす―幕の内弁当の伝統を生かす食のアート | p.189 | 13分 | |
第10章 ご当地味戦略で本家を凌駕する―ガラパゴス化こそ完全ローカライズの近道 | p.211 | 9分 | |
エピローグ | p.227 | 6分 |
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