「無知」に気づき、「無知」を活用する「問題発見」のための思考法を解説した一冊。
■未知の未知を意識する
「未知の未知」の領域がある事を意識する事が問題発見のために重要である。そもそも私達の既知の領域は非常に限られたもので、その中だけで考えていても所詮断片的かつ表層的な問題しか解決できないからである。
特に現代のように、与えられた問題を解くのではなく、問題そのものを見つけて定義する事が重要な時代においては「そもそも何が問題なのか?」を、予断や偏見を持たずに考えられる能力が重要となる。
問題発見と問題解決との発想の根本的な相違の根底には「知」の性質がある。「知識」とは事実と解釈の組み合わせの静的なスナップショットである。知識を積み上げる行為そのものが、次の新しい問題発見をする時の障害となる。
事実に関しての「上書き」は比較的簡単だが、目に見えにくい「解釈」については「上書き」がしにくい。そもそも特定の解釈が頭の中に埋め込まれてしまっている「未知の既知」にすら気付かない場合も多いからである。一度憶えた価値観はそう簡単には捨てられない。これが「知のジレンマ」の根本的原因である。
■無知・未知」に目を向けることが重要
「知識がすべての原点」ともいえる問題解決では「既知の未知」を「既知」に変えるために決められた変数を最適化する、あるいは「枠が決まった塗り絵を塗る」事が重要で、そのためにはある程度すでに体系化された知識を活用する。
これに対して、問題発見のフェーズでは、はるかに曖昧性や不確実性が上がり「変数そのものを探し出す」事が求められるため、過去の知識を用いつつ、そこから新たな創造性を発揮する必要がある。そのためにも「無知・未知」に目を向ける事が重要になってくる。
「無知・未知」を意識的に活用していくのに必要なのが「イグノランスマネジメント」という考え方である。既に知っている事だけでなく、知らない事に着目し、活用する。
■事実と解釈の乖離
解釈は時代に応じて常に変化すべきものであるが、知識として「再利用可能」にするためには何らかの「スナップショット」を切り取って静的に固定しなければならなくなる。したがって時間を超えた普遍性がないために、環境変化が激しい時代では陳腐化して役に立たなくなってしまうものも多い。事実と解釈は時間軸で見て乖離が生じていく。そこに問題が生じる。問題発見を行う上での重要なポイントは、このメカニズムを認識してギャップを見つける事である。
■「無知・未知」を活用する方向性
「無知・未知」を活用するには2つの方向性がある。
①無知の知
自らの無知を「メタ」のレベルで、つまり自分自身を上から見る視点で眺めて認識する。「未知の未知」をどれだけ意識できるかで勝負が決まる。
②素人視点
問題発見に必要なのは、知識をリセットする事である。特に「解釈」のレベルの知識は、時には悪い意味での「思い込み」となって人間の判断力を鈍らせる事がある。解釈レベルをすべてリセットして、無知の境地で素直に物事を見る事ができるかが問題発見の鍵となる。
著者 細谷功
1964年生まれ。クニエ マネージングディレクター 東芝で8年間エンジニアとして働いたのち退職。アーンスト&ヤング・コンサルティング(ザカティーコンサルティング→クニエの前身)に入社。 製造業を中心として製品開発、マーケティング、営業、生産等の領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定量化、プロジェクト管理、ERP等のシステム導入およびM&A後の企業統合等を手がけている。
週刊ダイヤモンド 2015年 4/18号 [雑誌] 作家 佐藤 優 |
日経ビジネス |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 6分 | |
PARTⅠ 「知」と「無知・未知」~その構造を明らかにする | p.19 | 47分 | |
PARTⅡ 「問題解決」のジレンマ~「問題解決」できる人は「問題発見」ができない | p.83 | 25分 | |
PARTⅢ 「アリの思考」vs.「キリギリスの思考」~問題解決から問題発見へ | p.117 | 67分 | |
PARTⅣ 問題発見のための「メタ思考法」~次元を上げて問題を発見する | p.209 | 39分 |
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