「お金とは何か」をテーマに世界中を旅した著者が、お金の仕組みについて解説している本です。
■お金を知らない日本人
私たち日本人は世界一、お金の事を知らない。日本の国民の大多数は世界人口のトップ5%という富裕層に入る。しかし、そんなデータとは裏腹に自分の事を「お金持ちだ」とか「経済的な自由がある」と実感している人がどのくらいいるだろうか。このデータと実感のギャップの原因は、私たちが世界で最もお金に関して無知な人間だという事実にある。お金に関する知識を得る事と、お金を真に理解する事とは異なる。なぜなら、お金はその捉え方や扱い方によって、全く姿を変えるものだからである。
日本人、特に30代以下の世代は、知識と経験の両面で「お金に関する教育」をほとんど受けていない。経済について学ぶ事はあっても「お金とは何か?」という本質的な問いについて、具体的に考え抜く機会はなかった。その原因の1つに、日本人が持つ「お金=汚いモノ」という無意識の感覚が挙げられる。日本人は勤勉に働き、ボーナスを喜び、お金を強く求める一方で、お金を汚いモノとして避けてもいる。そのような矛盾がお金に関して根本的な知識のない大人を生んでいる。
「幸せなお金持ち」「お金を持っているのに不幸な人」「お金がないのに幸せな人」「お金がなくて不幸な人」、この4種類に人々を分ける要因は、お金を「目的」と捉えるのか「道具」として捉えるのかの違いである。
お金を「目的」として捉える人たちは、次のような考え方を持っている。お金がないと幸せになれない。お金があれば幸せになれる。お金とは、自分の働く時間と交換して得るもの。サービスや製品の対価として支払うお金はなるべく少ない方がいい。しかし、一方で無意識的には、お金を面倒くさいものとか、ありすぎると不幸になるものと考えていたりする。これはお金自体の価値とパワーを盲目的に信じ切って、それが「道具」である事を見落としている。なので、それを手に入れる事が「幸せ」につながるという考えを持っている。
一方、お金を「道具」として捉えている人は、次のような考え方を持っている。お金とは、本質的には無価値だが、人間が発明した偉大なる「信頼の媒介物」である。最も大切な事は、人と人との信頼関係そのものを醸成していくこと。お金とは自らが生み出した付加価値の対価として受け取るもの。お金を支払うという事は、その相手に自らの信頼を渡すということ。だから、必ずしも安ければよいという訳ではない。お金を他者との信頼関係を築き、その信頼を交換し合い、自らの理想を実現するためのポジティブな「道具」として捉えている。
お金を「道具」として捉えている人は、保有するお金の量にかかわらず、幸せな人生を送っている。反対に、お金を「目的」として捉える人たちは、人間関係に問題を抱えていたり、どこか心の貧しさを負って生きている。
著者 渡邉賢太郎
1982年生まれ。リーマン・ショックを機に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を退職。2年間で40カ国を訪れる世界一周の旅に出る。 帰国後、2013年8月より、NPO法人ETIC.に入社。 Social Startup Accelerator Program 『SUSANOO』のプロジェクトリーダーを務める。
日本経済新聞 |
帯 School With CEO 太田 英基 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第一章 日本人は、世界一、お金のことを知らないという事実について | p.11 | 23分 | |
第二章 お金の歴史を紐解く -「お金とは何か?」という問いについて | p.77 | 23分 | |
第三章 お金に振り回される人と、道具として使いこなす人の違いについて | p.143 | 23分 | |
第四章 お金の危うさと、人間の弱さについて | p.209 | 18分 | |
第五章 「つながりキャピタリズム」の世界へ -信頼が可視化されるこれからの社会について | p.259 | 18分 | |
終 章 私たちはどのように働き、どのように生きていくべきかについて | p.309 | 11分 |
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