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2015/03/16更新

マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル

155分

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米国流経営の限界

原田氏の最大の成果は、2007年までに全店売上高を約1000億円伸ばした事である。原田氏の方針「基本に立ち返る」(2004〜2007年)が成功を収めたのは「藤田式経営=マクドナルドの日本化」を「原田式経営=グローバル標準の米国流」に戻す事がうまく機能したからだ。

当初の4年間、原田氏は大規模な店舗閉店は行わずに、極めてベーシックな改善努力に集中していた。最初に価格やプロモーションで集客し,客数が増えたところに、目新しい商品メニューを投入して客単価を上昇させた。

しかし、2007年以降、日本マクドナルドは戦略を転換し、直営店を売却しながら、大規模なFC化を推進する。FCを強化するのは、直営店よりもFC店の粗利益率の方が約2〜3倍高いからである。原田氏が戦略を転換した理由は、既存店の売上の伸びに陰りが見え始めた中で、米国本社からの収益改善圧力がかかった事による。

直営店のFC店への移管により、日本マクドナルドのFC比率は、2007年29%から2010年で60%まで上昇した。直営店の大量売却と急速なFC化は、日本マクドナルドの組織構造を大きく変え、「FC本部、FC店、従業員」の間の信頼関係を壊してしまった。マクドナルド・ビジネスの強みは「QSC+V」に徹底にあるが、FC化を進めた結果、正社員の働くモチベーションをそぎ、QSCを低下させてしまった。

顧客の喪失

原田氏の基本姿勢は、藤田時代の経営姿勢である「日本の事は日本で決める」とは対照的に、米国流に従うというものだった。年功序列制は廃止され、給与制度にも成果主義が取り入れられた。代表的な施策「メイド・フォー・ユーの導入」「24時間営業の積極推進」「100円メニュー」「FC化」など、グローバルの成功事例を導入したものである。

しかし、21世紀にグローバル市場で成功している企業は何らかの形で、現地の消費者や雇用状況を反映した適応的な行動を取っている。米国に依存しすぎる事には危険が伴い、2010年以降、原田氏が繰り出す施策が外れ始めた。

2009〜2010年にかけて、日本マクドナルドの店舗は413店減少した。一斉大量閉店が引き金となって、業績は下降をし始めた。店舗が生活動線の上から消えてしまう事で、不便になった顧客は次第にマクドナルドから離れていく。顧客に選ばれる確率は、地域の店舗密度がある一定の値を超えると、店舗シェアよりもさらに高い割合になる事が知られている。これと逆の事が原田時代の後期には起こり,大量閉店した2年後には既存店の客数と客単価が同時に低下し始めた。さらに、価格の引き上げによる「値頃感の喪失」、「コンビニエンスストアとの競合」といった要因により、顧客基盤を失った。