業績不振に陥ったマクドナルドの失敗の要因を分析している一冊。マクドナルドのビジネスモデルを解説しながら、経営戦略の失敗を解き明かしています。
■創業以来、最大の危機
日本マクドナルドの2014年12月期の業績予想は純損益が▲170億円と最終赤字に転落する見込みである。使用期限切れ鶏肉問題が発覚する前から、日本マクドナルドの業績は大きく落ち込んでいた。2013年12月決算では、売上高2604億円(前期比▲11.6%)、営業利益115億円(同▲53.3%)と上場以来最大の減収減益だった。日本マクドナルドは、創業以来、最大の危機を迎えている。
マクドナルド失速の予兆は、2012年の初め頃からデータに表れ始めていた。この頃から、マクドナルドの顧客満足度は少しずつ下がり始めていた。2012年度調査では、飲食業界の最下位集団に入るようになり、2013年度には、調査対象の24社中最下位に転落。リピート率でも最下位となった。
原田氏の失墜の裏側には3つの要因があった。
①マーケティングの失敗(経営の短期志向)
米国から持ち込んだ新商品をヒットさせ、マクドナルドをV字回復させたが、その後価格水準が商品力に見合わなくなった。そして、顧客に対するサービスも、店舗の清潔度も、ハンバーガーそのもののおいしさにも、抜本的な変革は起こらなかった。結局は、短期的な対応に終始し、長期的な環境変化に対応するチャンスを逃してしまった。
②サービスのトライアングルの崩壊
マクドナルドのようなサービス業は、企業、顧客、従業員の努力によって支えられている。中でもマクドナルドにとって特に重要なのは、アルバイトを含む従業員の存在である。しかし、メニュー表の撤去や「ENJOY! 60秒サービス」の実施によって、クルーの疲弊とモチベーションの低下を招いた。さらに手が回らなくなった店内は、清掃が十分でなくなり、QSCが低下した。
③画期的なイノベーションの不足
米国で創業してから約60年間、抜本的なイノベーションは起こらず、いまやマクドナルドのFCシステムは、古びたモデルになっている。人々は新鮮でおいしい食材と料理を求めている。但し、フレンドリーなサービスは変わらずに。旧来型のファストフードのモデルは安価な食材をグローバルに最適調達し、セントラルキッチンで効率よく加工し、調理済みの加工食材を、店舗で素早く提供するが、このタイプのファストフードの人気には陰りが出てきている。
著者 小川 孔輔
1951年生まれ。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科 教授 日本フローラルマーケティング協会 会長 MPSジャパン創業者、取締役 カリフォルニア大学バークレー校留学を経て、1986年より法政大学経営学部教授(~2010年)。現在、法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授(マーケティング、マーケティング・リサーチ担当)。
日本経済新聞 経済評論家 小関 広洋 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 迷走するマクドナルド | p.13 | 8分 | |
第2章 マクドナルドはどう誕生し、世界最大の外食チェーンに成長したのか | p.25 | 16分 | |
第3章 マクドナルドのビジネスモデル | p.51 | 20分 | |
第4章 原田マクドナルドの経営改革 | p.83 | 14分 | |
第5章 原田マクドナルドの戦略転換 | p.105 | 16分 | |
第6章 悪夢の3年:客はどこへ消えたのか? | p.131 | 20分 | |
第7章 マクドナルドに未来はあるのか? | p.163 | 14分 | |
おわりに | p.185 | 1分 |
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