普通なら聞きにくい話にどれだけ踏み込むか
「大ベテランの俳優さんを取材する時、代表作品を観るだけでも大変だと思うのですが、どうしてるんですか?」とか聞かれる事も多いが、答えは簡単。「全く観ないですよ」の一言である。
そんなの本気で観ようとしたらきりがないし、短期集中型で知識を詰め込んだところでボロが出るに決まっている。だから、作品論みたいな事は映画に詳しいライターに任せておけばいい。むしろ、やるべき事は普通なら聞きにくい話にどれだけ踏み込むかって事だ。
空気が悪くなるとしても、引かないところは絶対引くな
恋愛でも何でも、嘘をつき通すのは本当に難しい。自分がどんな嘘ををついたかなんていつまでも覚えていられる訳がないし、そもそも嘘なんて大体ディテールが甘いから確実にバレる。なので、インタビューする時のモットーは「嘘をつかない」事だ。
だから、映画の宣伝の取材であっても、その作品がイマイチだった場合は「面白かったです!」とは絶対に言わない。「あのシーンが良かったです」とかピンポイントで褒めるべきであり、そうする事で「いつも仕事で映画を観るとしんどい思いをする事が多いんですけど、これは本当に面白かったです」と、たまに言った時、そこにリアリティが出るし相手も喜んでくれる。
心を開かれすぎず適度に突き放す、この距離感が大切
取材は「あなたの敵じゃないです。心を開いてくれたら力になれるかもしれないですよ」というスタンスで相手に近づいていき、実際に心を開いてくれたら確実に面白いインタビュー記事にしてみせるけど、「しかし、あんまり信用されすぎても困るので、実は味方でもないです」と、適度に突き放す。
初対面で相手の懐に飛び込むための手段として本人も持ってないようなレアグッズや著書を持参して、それをプレゼントしたり、ブログを死ぬ気で読み込んだりするけれど、友達みたいな距離感になったら慣れ合った感じの刺激のないインタビューになるはずだし、そもそも下手に信用されて「あなたは口が堅いだろうから」って事で洒落にならないオフレコ話とかされるのが一番困る。原稿にできなくてイベントでも話せないような内緒話なんて、教えてもらったところで意味もないのである。なので、「あの人に話したら一気に広まっちゃうかもしれないけど、でもちゃんと聞いてくれるから、つい何でも話しちゃう」ぐらいの関係性を作るべきである。
打ち合わせなしのガチンコインタビューの「つかみ」術
とにかくインタビューで重要なのは「つかみ」だ。インタビューも最初の数行が面白くなければ、それだけで読みとばす。今回のミッションは生放送だから、最初の質問だけで、「あ、こいつギリギリの事やる気だな」と思わせなければいけないのである。