IBMのロゴなどを手がけた、20 世紀を代表するグラフィックデザイナー、ポール・ランドが、広告デザインの原則について書いた本です。デザインの本質について、その思想が書かれています。
■グラフィックデザインとは
グラフィックデザインとは、見る者に美しいと感じさせるもの。物の形や2次元空間の特性を利用するもの。記号論、サンセリフ(ゴシック体)の活字、幾何学を駆使するもの。コンセプトを抽象化したり、変形したり、変換したり、回転したり、拡張したり、繰り返したり、反映したり、いくつも集めたり、再編成したりするもの。
だが目的に適っていなければ優れたデザインとは言えない。
グラフィックデザインとは、動的均斉や非対称性を想起させるもの。きちんとまとまった1つの構造になっているもの。直感、あるいはコンピューター、創意、あるいは座標系によって生まれるもの。
だが見る者にメッセージを伝えられなければ、優れたデザインとは言えない。
メッセージをヴィジュアル化して人に伝える場合、ひと目で発信者の意図が理解されなくてはならない。それがどんな方法でも、相手に何か主張したいのか、それとも情報を提供したいのかにかかわらず、大勢が目にする広告掲示板から個人的な出産報告に至るまで。つまり、美しく、目的に適っていなければならない。
■創造力と表現
アイディアがありきたり。また、そのせいで独創性のない作品に仕上がる。それは扱う対象のせいではなく、命題への取り組み方が間違っている可能性が高い。適切な答えが導き出されていないと、対象の美点がうまく伝わらない事がある。
イギリスの画家ロジャー・フライは、扱う素材とデザインの組み合わせ方についてこう述べている。「ある素材にデザインを加える場合は、次の事を心に留めておけば、素材とデザインの相乗効果を期待できるかもしれない。素材そのものを、あるいはデザイン性を目一杯強調するのではなく、直感的な情報はあまり与えず、見る者の想像力をかき立て、説明するのではなく感じさせる事によって心を動かすのだ」。
美意識が感じられなかったり、現物を見たまま表現したりしたヴィジュアル・メッセージは、知的好奇心をかきたてる事がなく、見た目の面白みにも欠ける。同様に、活字書体・幾何学模様・抽象的な形を不用意に使うと、自己満足だけの作品になりさがる。反対にアイディアの本質を表現するために試行錯誤した結果、あるいは目的意識・独創的な発想・分析判断から生まれたヴィジュアル・メッセージは、斬新であるだけでなく、有意義で印象的である。
著者 ポール・ランド
1914年生まれ。グラフィックデザイナー IBM のロゴや『ぼくはいろいろしっているよ』等の絵本で日本でも有名なグラフィックデザイナー。グラフィックデザインにおけるスイス・スタイルの創始者のひとり。 1956〜1969年にかけて、さらに1974年以降、イエール大学でデザインを教えている。1972年、ニューヨークのアート・ディレクターズ・クラブの殿堂入りを果たした。 出版の歴史にもっとも影響を与えたデザイナーのひとりで、“グラフィックデザイン界のピカソ”と崇拝されている。グラフィックデザインの発達期に革新的な作品を次々と発表し、さまざまな立場や方法での活動が、現在のグラフィックデザインという仕事の基礎となっている。
帯 MR DESIGN アート・ディレクター 佐野 研二郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
美しく、目的に適うこと | p.9 | 0分 | |
デザイナーの命題 | p.11 | 0分 | |
広告におけるシンボル | p.13 | 1分 | |
シンボルの万能性 | p.18 | 1分 | |
ユーモアの役割 | p.22 | 3分 | |
創造力と表現 | p.36 | 2分 | |
見る者を惹きつけること | p.48 | 5分 | |
昨日と今日 | p.74 | 0分 | |
印刷における形式と表現 | p.76 | 4分 |