小米、BYD、テンセント、ファーウェイなど、中国発の企業が、グローバルに活躍する時代がやってきている。中国発のイノベーションの特徴を紹介しながら、リバース・イノベーション2.0とも言うべき流れを紹介する一冊。
■リバース・イノベーションとは
「リバース・イノベーション」は、先進国のグローバル企業が開発した製品を、現地ニーズに合わせてコストダウンや不要な機能の削除を行って販売するのではなく、新興国の現地ニーズに合った製品開発を行うという戦略だ。つまり、現地でもイノベーションを取り入れ、最適な製品設計を行うという考え方である。
「世界の工場」であった中国は、今や「世界の市場」とも言われているが、それだけではない。1990年代以降、グローバル企業が中国に設立したR&D拠点も年々増えつつある。その分野は電子製品やソフトウェアから、環境、エネルギー、医療へと広がり、範囲の広さや規模の大きさから「世界のR&D拠点」とも呼ばれるようになった。実際、R&D拠点の中国シフトは加速している。「フォーチュン・グローバル500」に入るグローバル企業の内400社以上が、中国でR&D拠点を設立している。
イノベーションの原動力は、技術の進歩とユーザーのニーズにある。新興国ではその経済成長に伴い、新興国ならではのニーズが出現し、それを満たすためにイノベーションが起きている。
一般的に先進国のグローバル企業は、先進国で製品開発をし、それを新興国向けにマイナーチェンジしてグローバル販売するという戦略を取っている。これがグローカリゼーション戦略である。リバース・イノベーション戦略は、その逆の戦略となる。
グローカリゼーションの場合、先進国の一般消費者向けの製品は、新興国にとってはハイエンド製品である事が多い。そのため、そのままでは富裕層の需要しか満たせない。これに対し、リバース・イノベーションでは、新興国のボリューム・ゾーンの消費者をターゲットとする。品質や性能は必要最小限にとどめ、とにかく価格の安い製品を開発し、その安価な製品を先進国にも輸出、販売を拡大するというモデルを取る。これにより先進国でのニーズを掘り出し、より大きな需要を刈り取る事ができる。
技術イノベーションを「基礎研究」「応用技術」「製品」のレベルで分けるならば、現在のリバース・イノベーションは、主に「製品イノベーション」レベルにある。但し、応用技術のリバース・イノベーションも始まっている。今後、その範囲はさらに広がり、広義のリバース・イノベーションとして、広義のリバース・イノベーションとして、ビジネスモデルや経営管理などにも拡大してゆく見通しだ。
こうしてリバース・イノベーションは「リバース・イノベーション2.0」というべき新たな段階に入った。
著者 徐航明
90年代後半に来日し、東京工業大学大学院総合理工学研究科(知能システム科学専攻)を修了。 外資系通信メーカーを経て、現在、日系大手電機メーカーに勤務。技術標準化とアライアンス活動に携わっている。イノベーション、技術経営、比較文化の研究に関心があり、日本と中国で執筆、翻訳活動を行っている。
帯 一橋大学イノベーション研究センター教授 米倉 誠一郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 イノベーション中国発?! | p.1 | 4分 | |
第1章 リバース・イノベーションと中国発のイノベーション | p.15 | 13分 | |
第2章 世界を変えた中国発のイノベーション | p.35 | 45分 | |
第3章 なぜ中国か―天の時、地の利、人の和 | p.105 | 27分 | |
第4章 新興国で考えるイノベーションの本質 | p.147 | 26分 | |
第5章 これからのイノベーションを創る主役は誰か | p.187 | 38分 |
現地化すること。 企業が製品やサービスなどを海外で販売する場合、国ごとの文化や風習を考慮して、その…