心配や不安が次のステージへの原動力
食べた人にとって圧倒的ではないと、コンクールでは選ばれない。そのためには誰が食べてもわかりやすい味にする必要もあるし、感動する要素も入れなければならない。やりすぎ・進み過ぎもいけない。
パッケージのデザインといった評価の対象にならない面から、ショコラにつける説明書まで納得がいくまで何度も考え、つくり直す。それは「ショコラだけでは伝え切れないかも」「勘違いされて伝わってしまうかも」という心配があるからだ。完成したショコラも航空便で送るのではなく、常にベストな温度を保って届けるために、スタッフにフランスまで持って行ってもらう。
「こんなんじゃあかん」「まだまだ足りない」、そんな心配や不安が、いつも次のステージへと突き動かしてくれる。人は現状に満足してしまったら、そこで成長が止まってしまう。
商品の寿命を考える
エスコヤマの商品を考える時、寿命を考えて決めるようにしている。看板商品である「小山ロール」はこの先もずっと看板商品でなくてはならない。けれども、売れるものはいつか売れなくなる可能性もある。どうすればずっと小山ロールが人気商品でいられるのか、その答えはシンプルで「味を変えない」という一点だった。そしてその商品を常に進化させる。それはレシピを変えるという事ではなく、レシピのポテンシャルを最大限に引き出す努力を怠らない、という事だ。
「味を変えない」とはプレーンしか作らないという意味である。イチゴ味や抹茶味も作って欲しいと多くの人から言われてきたが作るつもりはない。なぜなら、味を増やしてしまったら途端に飽きられてしまうからだ。世の中のブームになっているものが一過性で終わるのは、味の種類を増やしたり、店舗を急拡大させた場合が多い。味の種類を増やしたら、短期間で「あれもこれも」とみな集中して食べるだろう。そして一通り食べると満足してしまうのだ。数ヶ月に一度食べて「やっぱりおいしいなあ」と思ってくださるお客様が大勢おられれば、ずっと人気商品でいられる。
心を配る想像力
心配性は、ネガティブなイメージがある。しかし、心配性は行動をするという前提で、「完璧にするためにどう準備するか」「トラブルを回避するためにどんな対策をとれるか」を考えているのだ。行動に結び付けるための、むしろポジティブな考え方なのである。心配性だからこそ丁寧に仕事をするのだし、アイデアも生まれる。「こうやったらええんやないか」とできる事を探していくのだ。
心配とは「心を配る」と書く。お客様に心を配り、スタッフに心を配り、さらに日本の未来に心を配る。そうやって想像力をフル回転させて、みんなが幸せになれるような方向に導いていくのが、心配性の力なのだ。