モスバーガーの社長が、地域密着型、家族を核とした経営哲学を書いた一冊。モスバーガーが創業以来どのような考えで、拡大していったかが紹介されています。
■モスバーガーの創業
マクドナルドの1号店が銀座にオープンした1971年の秋、モスバーガーの創業者である叔父櫻田慧、後の2代目社長渡邉氏、専務吉野氏がアメリカに渡り、ハンバーガーの修行をした。彼らがモデルにしたのはロサンゼルスにある「トミーズ」というお店のハンバーガーだった。トミーズの特徴は、モスバーガーの店舗でも実践しているアフターオーダー方式である。普通、ハンバーガーといえば、つくり置きしている店が大半で、バンズ(パン)はパサパサしていた。しかし、トミーズは注文を受けてから調理をするので、バンズもしっとりしていて、他の店のハンバーガーとは一線を画していた。
1972年3月、東京都板橋区の成増にあるスーパーの地下に、モスバーガーの第1号店を実験店舗としてオープンした。しかし、このエリアには、当初のターゲットだった若者層ではなく主婦層が多かったため、失敗だった。そこで、成増駅からは裏側にあたる八百屋さんの倉庫を見つけた。
「モスバーガーと他のハンバーガー店とで一番違う点はどこでしょうか?」という質問をよくされる。商品数が多いこと、注文を頂いてから商品をつくるアフターオーダー方式、加盟店のオーナーさん同士のつながりが強いことなど、たくさんある。
ハンバーガー1つ300〜350円という価格設定についても、低価格競争をしない事や、価格の約40%が材料費を占めている事などが、しばしば特徴として指摘される。
これが一番の特徴だというのはできないが、「モスが大切にしている事は何か?」は即答できる。モスが創業当時から一番大切にしていたものが「愛」だった。その1つのあらわれが「モスの加盟店になりたい」という、加盟店希望者との面談だった。モスの経営理念である「人間貢献」「社会貢献」を詳細に説明した上で、徹底的にヒアリングする。フードビジネスに参入する動機、モスを選んだ理由、目標とする将来像、人生の目的や生きがいなど、内容は多岐にわたる。そこをとことん聴く事で、相手が本当に人間や社会に貢献したくてモスをやりたいのか、単なる金儲けが目的なのかがわかる。
フランチャイズで成功するための一番重要な要素は、理念や価値観を共有できるかどうかである。
著者 櫻田 厚
1951年生まれ。株式会社モスフードサービス代表取締役会長兼社長 父の急逝で大学進学を断念して広告代理店に入社。1972年に叔父(創業者・櫻田慧)の誘いで「モスバーガー」創業に参画。直営店勤務を経て、教育・営業等を担当。 1990年には海外事業部長として台湾へ赴任、モスバーガーのアジア進出の礎をつくる。1994年取締役就任。1998年代表取締役社長就任。2014年より会長兼務。
帯 作家 村上 龍 |
日経ビジネスアソシエ 2015年 03 月号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに モスはいつも「家族」に助けられてきた | p.3 | 4分 | |
第1章 家族的なつながりが、現場を強くする | p.21 | 28分 | |
第2章 家族的なつながりが、強い会社をつくる | p.77 | 26分 | |
第3章 家族的なつながりのなかで、会社や社員を成長させる | p.129 | 25分 | |
第4章 家族的なつながりから、働き方を考える | p.179 | 22分 |