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2015/01/07更新

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)

  • 岩瀬 昇
  • 発刊:2014年9月
  • 総ページ数:254P

171分

4P

  • 古典的
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  • 事例が豊富な

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日本の輸入ガスはなぜ高いのか?

日本の2013年LNG輸入量は、世界全体のLNG取引の約37%を占めている。日本は天然ガスの生産地から遠く離れているため、パイプラインでの輸入が考えられないためである。日本ではLNGは原油の代替燃料だったため、価格を原油価格にリンクさせた。一方、欧州は競合燃料である重油や軽油価格にリンクしており、アメリカは純粋に国内需給要因で価格が決まる。原油価格高騰により、日本向けが高い状況になっている。

日本の多くの人々がアメリカ産のLNG輸入開始に大きな期待を寄せている。アメリカ産LNG輸入が開始される事で得られるメリットは、単に安いだけではなく、今までとは違うコンセプトに基づくLNGが買えるという事にある。今までのLNG長期契約の中の不利な契約条件を、契約更改時に変更する交渉材料となり、新規契約では、最初から有利な条件を勝ち取れる可能性を示しているのだ。

シェール革命

アメリカの起業家魂は、今も昔も石油開発業界の「ワイルドキャッター」(小規模独立系石油開発業者)達が共有しているものだ。「シェール革命の父」と言われるジョージ・ミッチェルもワイルドキャッターの1人だった。ジョージは、一切の公教育を受けていないため字も読めなかったギリシア移民の子として生まれ、テキサスA&M大学で地質学と石油工学を学んだ。超一流の石油会社アモコに入社し、戦後起業した。紆余曲折の後、石油開発事業で成功し、晩年になって執拗にシェールガスの経済的生産に挑み、1998年、水圧破砕法によって技術的ブレークスルーをなした。

アメリカには、シェール革命が起こる好環境が存在していた。

①起業家魂
②鉱業権は政府ではなく土地所有者のもの
③パイプライン網
④資機材、人材、技術力
⑤周辺サービス産業

アメリカは長い間、世界最大の産油国であった。だが戦後、国内需要は急増し、1948年には純輸入国になってしまった。そのため、政府は原油・天然ガスの埋蔵量追加確保、新技術の導入による新エネルギー源確保のために、優遇税制等の政策を行ってきた。

ジョージ・ミッチェル達は、当初この財政支援を得て、シェール層に眠る天然ガスを経済的に生産する事を試みた。ジョージと技術陣は、1992年に政府の財政支援がなくなった後も、諦めずに工夫に工夫を重ね、試行錯誤の末に生産技術を確立した。

アメリカ以外の各国におけるシェール開発は、種々課題が山積みされており、まだまだ時間がかかりそうである。逆に言えば、シェール革命はアメリカの持つ底力を証明しうる。アメリカは今後ますます国力を増していく。安価なシェールガス、シェールオイルがアメリカのエネルギー自給率を高め、さらなる技術革新をもリードする活力を生み出すからだ。